完全自動運転 「FSD」のβ版をリリースしたテスラ

 コロナ禍で自動車産業が苦戦する中、テスラがなんと過去最高益を達成した。今回は好調なテスラの決算内容と先日リリースされたばかりの完全自動運転のソフトウェアについて見ていきたい。

2020年第3四半期において過去最高益を達成

 先日の決算内容を見ると、売上高は前年同期比39%増の87億7100万ドル、純利益131%増の3億3100万ドルであった。市場の予想を大きく上回り、5四半期連続の黒字を確保。過去最高益を達成した。

 温室効果ガスの排出枠(クレジット)の販売額は3億9,700万ドルだった。温室効果ガス発生に伴うEU等の規制による罰金を回避するために、各自動車メーカーは、テスラ等のEV自動車メーカーからクレジットをよく購入している。第2四半期と比較すると7%の減少となるが、堅調な数字と言えよう。

 今回の決算内容で、何よりも嬉しいニュースが販売台数の増加だろう。第3四半期では13万9,300台販売した。テスラは新型コロナウイルスが拡大する前の今年1月、50万台の年間販売目標を掲げている。これは2019年の実績と比較して36%高い目標であった。この目標達成がパンデミックの影響により危ぶまれていたが、今回の決算を受け到達の可能性をなんとか繋ぐことができた。実際に達成するためには、残り18万1,000台を販売する必要があり、上海工場の生産力向上とモデルYの販売状況が鍵となる。

 この一年間で株価が4倍になり、自動車メーカー時価総額トップとなった、勢いづくテスラの意地をぜひとも見たい。

進化したテスラの自動運転技術

 もう一つ話題となっているのがテスラの自動運転技術である。テスラは現在販売中のEV自動車に、自動運転に対応した「FSD(Full Self-Driving)チップ」を搭載しているが、10月22日に、この最新のFSDソフトウェアのβ版がリリースされたのだ。一部の選ばれたユーザーのみへのリリースだが、今後多くのドライバーに展開される予定である。

 今回のリリースにより、右左折はもちろん、車線変更、信号待ち、一時停止等、まるで人が運転しているかのような自然な走行が可能となった。通行人を認知する機能も向上しており、これまで以上に安全になった印象を受ける。

 ただし、システムアップデートの免責条項には「最悪の場合、誤作動を起こす可能性がある」との記載がある。あくまで運転支援機能であるため、引き続きドライバーは走行に際し注意を払う必要がある。

 イーロン・マスクCEOは2020年7月9日、中国・上海で開幕した「世界人工知能(AI)カンファレンス」において、自動運転レベル5(完全自動運転)について「近く実現するだろう」と宣言している。実現には国によるインフラ整備、法整備といった課題も多く存在するが、こうして技術の進歩を見ると、早期の実現をどうしても期待したくなる。

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