ガートナー、先進企業はパンデミック下でもデジタル・イノベーションを優先していると発表

ガートナーが世界74カ国の主要業種に属する1,877人のCIOを対象に調査したところ、先進企業は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下でもデジタル・イノベーションを加速させ、先進テクノロジを活用しようとしていると発表した。2021年はデジタルを巡る競争の年となり、パンデミックの中でも取り組みを精力的に進める企業が機運を維持できると見込んでいる。アナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのアンディ・ラウゼル・ジョーンズ氏は「CIOが考えるべきことやなすべきことの本質は何も変わっていませんが、環境が大きく変化しました。COVID-19のパンデミックに起因するリモートワークの拡大に大きく貢献できたことは、西暦2000年問題以来、CIOが成し遂げた最大の成果の1つと言えるでしょう」と述べた。続けて「今日のCIOは、CEOの注目を集め、テクノロジの近代化の必要性を上級ビジネス・リーダーに説き、デジタル・ビジネスへの取り組みの加速を取締役会に促しています。千載一遇の機会が訪れているかもしれない今、CIOはこれを確実につかみ取る必要があります」と述べた。ガートナーの2021年CIOアジェンダ・サーベイは、CIOがデジタル・ビジネスの加速と長期的な俊敏性の獲得の両方に成功するための以下の4つの方法を発表した。

戦法を変える

デジタルなやりとりに対する顧客の期待が高まる中、CIOは企業がそうした状況に備えていくのを支援できる。サーベイに回答したCIOの76%が、2020年に新規デジタル・プロダクト/サービスへの需要が拡大すると回答した。2021年については、この割合がさらに増えるとしている(83%)。前出のラウゼル・ジョーンズ氏は「CIOにとって重大な分岐点がやってきます。かつてのビジネスの進め方に戻ることはありません」と述べている。CIOサーベイから「先進企業」が「平均的企業」よりも積極的に取り組んでいる、顧客向けのデジタル化領域が2つ浮かび上がった。1つは新規デジタル・プロダクト/サービスの導入の加速、もう1つは顧客アプローチ/市民エンゲージメントのためのデジタル・チャネルの活用だ。先進企業10社のうち9社がデジタル・チャネルを追求しているほか、その約4分の3がデジタル・プロダクトの導入スピードを上げている。顧客へのアプローチにおいてデジタル・チャネルの活用を増やした場合、企業が「遅れた企業」ではなく先進企業になる可能性は3.5倍高くなるとしている。

増幅力を解き放つ

CIOサーベイでは、パンデミックの結果として企業のITリーダーシップにどのような変化があったかを尋ねたところ、CIOの約70%がビジネス部門に助言するため特定のビジネス・プロセスに関する知識を深めたと答え、同じく約70%がITの価値の測定および明確化の取り組みを強化したと回答した。これに対して前出のラウゼル・ジョーンズ氏は「COVID-19のパンデミックへの対応は、PCの配備をはじめ単純作業のように見えますが、CIOにとっては重大な機会でした。CIOは、ITのリーダーシップをデジタル・ビジネスの加速に改めて集中させ、企業のコア・テクノロジを再構築することができました。パンデミック渦中のどこかの時点で、すべてのCIOに能力を発揮するチャンスがあったのです」と述べた。

足かせを減らす

CIOサーベイから、CIOが「足かせ」(サプライチェーンのパフォーマンス低下等)を体系的に把握し排除することでデジタル化を加速させられることが判明した。多くのCIOがパンデミック中に売上高が減少したと回答したが、その回答率は先進企業では29%にとどまったのに対し、平均的企業では45%、遅れた企業では62%だった。こうした中でも、企業が強気の姿勢を見せた領域も複数存在していた。CIOは、新規ビジネス・イニシアティブ、買収、コストの競争力、従業員の生産性の各領域でパフォーマンスが向上したと回答している。これに対してラウゼル・ジョーンズ氏は「損失は出ましたが、CIOは守りに入るのではなく、攻めの姿勢を取ろうとしています」と述べている。需要の変化について尋ねたところ、先進企業の58%がCOVID-19発生後に新たに獲得した顧客からの需要が増えたと回答したのに対し、平均的企業では49%、遅れた企業では37%だった。

リソースの投入先を変える

サーベイに回答したCIOは、2021年のIT予算の平均増減率を2020年の2.8%から微減となる2%と予測している。先進企業は、パンデミック収束後の再生フェーズにおける新規ビジネス優先課題に投資や人材を振り向けるべく、平均的企業や遅れた企業よりも積極的に変化に立ち向かっているとガートナーはみている。デジタル・イノベーションへの資金拠出を増やしたと回答した割合は、先進企業では63%だったのに対し、平均的企業では52%だった。デジタル・イノベーションへの資金拠出を増やした場合、企業が遅れた企業ではなく先進企業になる可能性は2.7倍高くなる。ラウゼル・ジョーンズ氏は「先進企業のCIOが有利なスタートを切れたのは、直面する制約がより少なかったからです。実験を支援するためのIT資金を追加投入できたCIOは、平均的企業や遅れた企業よりも先進企業に多い傾向がありました」と述べた。他方、CIOはデジタル化を支援するテクノロジに投資をシフトさせると回答している。リモートワークへの移行に伴い、新たな攻撃対象が生まれたことから、サイバーセキュリティ支出は増加し続けている。調査対象となったCIOの61%がサイバーセキュリティ/情報セキュリティへの投資を増やすと回答しており、これに僅差でビジネス・インテリジェンス/データ・アナリティクス(58%)、クラウド・サービス/ソリューション(53%)が続いた。このような結果に対してラウゼル・ジョーンズ氏は「2020年に成功を収めるということは、差し迫ったビジネス・ディスラプションに耐えられるよう事前に予測を立て、IT部門のみならず企業全体で適応力を強化することを意味すると、私は2019年に話しました。COVID-19のパンデミックは、企業に大打撃を与えました」と述べている。また「CIOは、2020年に自社にもたらした機運を足掛かりに、より価値が高く、より戦略的なイニシアティブに継続的に関与する姿勢を2021年も取り続ける必要があります。CIOがビジネス部門のために良い仕事をしていけば、2021年もいっそう頼りにされるようになるでしょう」と述べた。

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