月間22勝を呼んだ柳田の貢献、鷹勢を上回る楽天右腕も光る…セイバー指標で見るパ月間MVPは?

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】

ソフトバンクはプロ野球記録となる月間22勝をあげてリーグ優勝決める

プロ野球は11月に入り、ペナントレースも残りわずか。セ・リーグは巨人が、パ・リーグはソフトバンクがリーグ優勝を決めました。そんな10月のパ・リーグ月間成績は以下の通りとなりました。

ソフトバンク 22勝4敗
打率.276 OPS.777 本塁打24
先発防御率1.56 QS率63.0% 救援防御率2.42

西武 14勝11敗
打率.211 OPS.610 本塁打18
先発防御率4.27 QS率34.6% 救援防御率3.77

日本ハム 11勝13敗
打率.227 OPS.650 本塁打19
先発防御率4.29 QS率53.8% 救援防御率3.71

楽天 10勝13敗
打率.259 OPS.715 本塁打19
先発防御率3.46 QS率53.8% 救援防御率4.70

オリックス 9勝16敗
打率.247 OPS.670 本塁打16
先発防御率3.78 QS率53.8% 救援防御率3.72

ロッテ 8勝17敗
打率.208 OPS.585 本塁打13
先発防御率3.08 QS率70.8% 救援防御率2.51

月間22勝のプロ野球記録を樹立して圧倒的な強さを誇ったソフトバンク。今月もチーム防御率1.82の投手陣に加え、チームOPS.777、1試合平均5.26点と投打がかっちり噛み合って3年ぶりのリーグ優勝を果たしました。一方で、チーム防御率2.91と投手陣は踏ん張りながら、チームOPS.585、1試合平均2.6得点と急落したロッテは月間9つの負け越しとなり、西武とのCS争いの渦中にいます。

ソフトバンク・周東佑京【写真:福谷佑介】

際立つ柳田の活躍、13試合連続盗塁の周東もチーム4位の貢献度

この10月の月間MVPを、セイバーメトリクスの指標から選出したいと思います。打者評価としては、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりもどれだけその選手が得点を増やしたかを示すwRAAを用います。

・西武 栗山巧1.61 森友哉0.99 外崎修汰0.55
・ソフトバンク 柳田悠岐15.31 栗原陵矢6.89 グラシアル5.96
・楽天 浅村栄斗10.06 ロメロ7.48 小郷裕哉6.72
・ロッテ 清田育宏5.85 菅野剛士2.10 加藤翔平0.69
・日本ハム 近藤健介10.96 西川遥輝7.56 中田翔1.71
・オリックス 吉田正尚8.63 T-岡田4.50 モヤ4.14

上記の中には出てきていませんが、ソフトバンクの周東佑京内野手はwRAA5.28でチーム4位の貢献を示しています。周東は10月16日から30日まで13試合連続盗塁を記録しましたが、これは福本豊氏の11試合連続というNPB記録、バート・キャンパネリスの12試合連続というMLB記録を上回る“世界新記録”となりました。ただ、盗塁は出塁が前提になります。それだけ周東は出塁できていたということで、月間出塁率.353、打率.306、OPS.803、27試合中25試合で出塁を記録しています。

そして、今年のソフトバンクの攻撃陣はなんといっても柳田悠岐の貢献が大きいことでしょう。シーズンのwRAAは11月3日現在で58点台に達しています。チーム2位のグラシアルで7点台ですから、その貢献度が計り知れないことがお分かりいただけると思います。今月も打率、出塁率、長打率、OPSでリーグ1位となり、原動力となりました。10月のセイバーメトリクス指標による打者部門のMVPは柳田を選出します。

柳田悠岐(ソフトバンク)wRAA15.31
打率.381 出塁率.483 長打率.588 OPS1.070(いずれもリーグ1位)
4本塁打(リーグ3位タイ)

楽天・岸孝之【写真:荒川祐史】

東浜と石川が4勝などソフトバンク勢が光る中で、好指標を叩き出した楽天の岸

続いて投手部門です。投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけの失点を防いだかを示す指標RSAAを用います。ここでのRSAAはFIPベースで算出します。各チームのRSAA上位3名は以下の通りです。

・西武 高橋光成3.04 平井克典2.89 ギャレット0.73
・ソフトバンク 千賀滉大5.25 東浜巨4.97 ムーア2.16
・楽天 岸孝之7.24 瀧中瞭太2.98 塩見貴洋2.26
・ロッテ 二木康太2.79 フローレス2.49 東條大樹1.18
・日本ハム バーヘイゲン7.13 有原航平2.37 宮西尚生2.00
・オリックス 山本由伸5.59 張奕3.26 山岡泰輔2.25

今月はソフトバンクが月間22勝をあげたこともあり、東浜巨と石川柊太が4勝、和田毅、ムーア、千賀滉大が3勝と月間勝利数の上位を占めています。そんな中で楽天の岸孝之が月間4勝とリーグ1位タイとなりました。月間防御率で比較すると、東浜巨が0.48、岸孝之が1.23、石川柊太が2.59と開きがあり、公式の月間MVPでは東浜が有利になりそうです。

ですが、被本塁打や与四死球、奪三振で評価するFIPや他のセイバーメトリクスの指標においては、

・岸孝之
36回2/3 被本塁打1 与四死球7 奪三振39
K/BB 5.57 FIP1.92 WHIP0.65

・東浜巨
37回2/3 被本塁打1 与四死球10 奪三振33
K/BB 3.67 FIP2.51 WHIP0.64

・石川柊太
31回1/3 被本塁打2 与四死球16 奪三振24
K/BB 2.67 FIP3.95 WHIP1.02

となり、岸がやや優勢と言えるでしょう。よって10月のセイバーメトリクス指標による投手部門のMVPは岸孝之とします。

岸孝之(楽天)RSAA7.24
36回2/3 QS率100%
防御率1.23 被打率.138 奪三振39 奪三振率 9.57
被本塁打1 WHIP0.65 K/BB 5.57 FIP1.92鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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