1イニングに単打2本、二塁打1本、三塁打3本を打たれて無失点!?

19世紀のメジャーリーグにジョット・ゴアという右腕がいた。1896年にパイレーツで3試合、1898年にレッズで1試合に登板し、合計15回1/3で防御率15.85という三流投手だった。しかし、マイナーのインディアナポリス球団でプレーした1897年には39試合で310イニングを投げて25勝9敗、防御率1.39という好成績をマーク。少なくともマイナーレベルの投手ではなかったようだ。このゴアは、1890年にインディアナ・ステート・リーグでプレーしていたとき、アンダーソン・タイガースという球団を相手に球史で最も不可能と思われる偉業を達成している。

その偉業というのは「1イニングに単打2本、二塁打1本、三塁打3本を打たれて無失点」というものだ。しかも、イニングの先頭打者から3人連続で三塁打を打たれている。後続の打者が二塁打1本と単打2本を打ったにもかかわらず、1点も入らなかったというわけだ。この偉業はいったいどのように達成されたのか。「トロント・グローブ」の記事によると、詳細は以下のようになっている。

まず、先頭打者のベンジャミン・アイルランドが三塁打を打った。次打者エド・ワイズウェルの打席でゴアの暴投があり、アイルランドは本塁へ突入したが、タッチアウト。直後にワイズウェルが三塁打を放ったものの、ランニング本塁打を狙って本塁でタッチアウト。三塁打2本の結果、二死走者なしとなった。

3人目の打者ラッシュ・シャムウェイがまたも三塁打を放ち、二死三塁のチャンス。次打者ジーン・ダービーは三塁線へ絶妙なバントを転がし、三塁手がファウルになるのを見守っているあいだに二塁へ進塁(記録は二塁打)。ところが、三塁走者のシャムウェイは三塁に留まっており、二死二・三塁となった。

5人目の打者ジーン・ファッツもバントを試み、一塁はセーフ(記録は単打)。しかし、いずれの走者も進塁しておらず、二死満塁となった。ここまで単打1本、二塁打1本、三塁打3本と合計5本のヒットが飛び出したものの、ゴアは1点も失っていない。

そして、6人目の打者フランク・フィアーが右方向への痛烈なライナーを放った。ついに得点が入るかと思われたが、この打球が一塁走者のファッツの腕に当たってしまった。野球規則に従ってフィアーにはヒット(単打)が記録されたものの、一塁走者のファッツはアウト。これでスリーアウトとなり、アンダーソン・タイガースは1イニングのあいだにゴアから6本のヒットを打ちながらも無得点に終わったのだった。

なお、この事例を紹介したメジャーリーグ公式サイトの記事は「贔屓球団が走者三塁から得点できなかったときは、アンダーソン・タイガースやジョット・ゴアのことを思い出しましょう」と締めくくられている。

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