MotoGP第13戦:初日はミラーが総合トップ。ビニャーレスが6基目のエンジン投入で決勝はピットレーンスタートに

 MotoGP第13戦ヨーロッパGPのフリー走行1回目、2回目がスペイン・バレンシアのリカルド・トルモ・サーキットで行われ、ジャック・ミラー(プラマック・レーシング)が初日総合トップタイムをマーク。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は総合4番手だった。また、このヨーロッパGPではチャンピオンシップでランキング3番手につけるマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が6基目のエンジンを投入。このため、決勝レースをピットレーンから迎えることになった。

 前戦テルエルGPから2週間ぶりに行われるヨーロッパGPでは、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が欠場し、今大会も引き続き、ステファン・ブラドルが代役を担う。アラゴンGP開催週の木曜日にPCR検査で陽性の結果となったことでアラゴンGP、テルエルGPを欠場したバレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は、11月4日に受けたPCR検査の結果が陰性となった。

 ただ、2度のPCR検査で陰性の結果が出なければ、出走することはできない。ロッシは11月6日に受けた2度目のPCR検査の結果を待つため、ヨーロッパGPの初日セッションは欠場。代役として、ギャレット・ガーロフが走行を行った。ガーロフはアメリカ人ライダーとして2020年シーズン、スーパーバイク世界選手権(SBK)に参戦したライダーである。アメリカ人ライダーとして最高峰クラスを走るのは、2016年のニッキー・ヘイデン以来となる。

 また、イケル・レクオーナ(レッドブルKTMテック3)は、自身はPCR検査で陰性だったものの、アシスタントの弟が陽性であることが判明。拠点とするアンドラ公国の新型コロナウイルス感染症の対策により、濃厚接触者となったレクオーナ自身も10日間の自己隔離が必要となった。このためヨーロッパGPは欠場。代役は起用されない。

 さらに、MotoGPクラスの初戦スペインGPからアンドレア・イアンノーネ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)の代役を務めてきたブラッドリー・スミスに代わり、今大会からはもうひとりのアプリリアのテストライダー、ロレンツォ・サバドーリがエントリーする。

 すでにシーズン終盤、11月に開催となったヨーロッパGPのフリー走行1回目は、気温18度、路面温度16度。さらにウエットコンディションのなかでセッションが始まった。

 序盤にトップに立ったのはジャック・ミラー(プラマック・レーシング)。2番手はフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)。3番手以降のポジションには変動があるものの、終盤まではこのふたりがトップ2をキープする。

 残り時間9分、5番手につけていたアレックス・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が6コーナーで転倒。A.マルケスはその後、走行を再開させた。

 順位はその後も大きく変わることはなく、ミラーが1分42秒063でトップ、モルビデリが2番手。ステファン・ブラドル(レプソル・ホンダ・チーム)が3番手で、ヨハン・ザルコ(エスポンソラーマ・レーシング)が4番手。A.マルケスは転倒を喫しながらも5番手でセッションを終えた。

 マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は10番手、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は11番手、ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)は16番手、そしてファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)は21番手の最下位だった。

■FP2もミラーがトップ。ビニャーレスは6基目のエンジンを投入

 フリー走行2回目を迎えるころには、次第に路面が回復しつつある状況。ただ、気温は20度、路面温度は19度と、午前中からあまり変わらなかった。コンディションがドライに変化していく状況だったため、ほとんどのライダーはスリックタイヤを履いてコースイン。タイムもセッション序盤から上がり、トップタイムをマークしたダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ・チーム)やミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)などが早々に1分35秒台のタイムをマークする。

 セッション開始15分、ミラーがトップに浮上。2番手にはカル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)がつける。クラッチローはテルエルGPの決勝レース後の検査で、右肩の靭帯を痛めていることが確認されている。

 セッションの残り時間が半分になるころには、フランセスコ・バニャイア(プラマック・レーシング)がトップタイムをマーク。2番手にはミラー、3番手にはアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)がつけていた。しかしその後、中上とA.マルケスが相次いでタイムを更新。さらにザルコが4番手タイムを記録し、ドゥカティ勢とホンダ勢が上位を占める。午前中とは打って変わって目まぐるしく順位が変わっていく。

 中上は残り20分で1分34秒534を記録してトップに立つ。2019年シーズンのバレンシアGPを右肩の療養のために欠場した中上にとっては、2年ぶりのバレンシアGPである。

 その後もセッションが終盤になるにつれトップタイムは続々と更新された。最終的にトップでセッションを終えたのは1分32秒528を記録したミラー。フリー走行1回目に続きトップタイムを記録し、初日を制した。

 2番手につけて躍進を見せたのはアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)で、前戦ウイナーのフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)が3番手。中上はトップから0.338秒差の4番手で、ポル・エスパルガロ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が5番手だった。

 クアルタラロは9番手、ミルは10番手。そして、11番手で初日を終えたビニャーレスは、このセッション中にヨーロッパGPの決勝レースで、ピットレーンスタートとなることが明らかになった。2020年シーズンのMotoGPクラスは、コンセッション(優遇措置)を受けていないコンストラクターの場合、エンジンの使用可能基数が5基と定められている。

 しかし、このヨーロッパGPで、コンセッションを受けないヤマハのビニャーレスのマシンに、6基目のエンジンが投入された。ピットレーンスタートは、規定数を超過したエンジンを使用することに対するペナルティである。ビニャーレスは、チャンピオンシップでトップから19ポイント差のランキング3番手につけている。ピットレーンスタートはビニャーレスのタイトル争いに大きな影響を及ぼすことになるだろう。

2020年MotoGP第13戦ヨーロッパGP ギャレット・ガーロフ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)
2020年MotoGP第13戦ヨーロッパGP ギャレット・ガーロフ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

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