「圧倒的な差は感じなかった」 DeNA期待の伊勢大夢が同級生・森下から受ける刺激

DeNA・伊勢大夢【写真提供:横浜DeNAベイスターズ】

明治大では今季新人王候補の広島・森下とチームメート「完成度が高い」

今シーズン、投手陣の故障が相次いだDeNAだが、その中で活きの良さを発揮したリリーバーがいる。ルーキー右腕の伊勢大夢だ。

今季は中継ぎとして31試合に登板し、3勝1敗4ホールド、防御率1.59の好成績。勢いのあるストレートを武器に34イニングを投げて37三振を奪うなど、投げっぷりの良さが印象的な22歳だ。明治大から2019年ドラフト3位指名を受けて入団すると、155キロに迫る力強いストレートでアピールに成功し、開幕1軍の座を勝ち取った。

伊勢がプロ入りを意識し始めたのは、大学1年生の時。野球部の同期には、今季新人王の最有力候補とされる森下暢仁(広島)がいた。森下は大分商時代から持ち前の投球センスを発揮。高校代表に選ばれるなどプロスカウト注目の逸材で、本人がプロを希望すればドラフト上位指名は確実だとされていた。だが、選んだの明治大進学だった。

「高校から本当はドラフト上位で(プロに)行けたっていう森下と、一緒の大学でやることになって、プロを意識するようになりました。自分の目の前に、ドラフト上位になる可能性があった選手、プロとのボーダーラインとも言える選手がいたので、頑張って食らいついていけば、自分もどうにかなるかな、と」

投手・森下を「完成度が高い」と評する伊勢だが、「そんなに圧倒的な力の差は感じなかった」という本音もあった。

「アイツより何か1つ抜ければ(プロに)いけるかな」

森下という存在を通して、伊勢は自分とプロの距離感を計っていた。

「ずっと森下がエースだったので、エースで投げるのは初めての感覚」

2人は揃って1年生から公式戦に出場。好敵手としてチームの勝利に貢献した。3年生だった2018年、春季リーグ戦で規定投球回数に達した伊勢は、森下(3.00)を上回る防御率2.64の好成績で、同年夏には侍ジャパン大学代表に選出。エースとして「第6回 FISU世界大学野球選手権大会」に出場し、チームを優勝へ導いた。

この国際舞台で得た自信が、プロ入りを目指す右腕の背中を押したという。

「明治では、ずっと森下がエースだったので、エースで投げるのは初めての感覚。チームを背負わせてもらっている、と僕は感じたし、そう思って投げていました。明治では『森下が投げれば勝てる』みたな雰囲気があったので、初めて味わう感覚でしたね。それが結構、自信になったと思います」

自称・目立ちたがりの伊勢にとって、大学代表は「森下だけじゃない。明治大には伊勢あり!」と主張する格好の舞台になったというわけだ。

開幕1軍の座を掴み、迎えた1軍デビューは6月20日の広島戦だった。その翌日、広島の先発投手としてデビューを飾ったのが森下。大学時代をともに切磋琢磨した2人が、互いのデビューを直接目に焼き付けられたのは、野球の神様からのプレゼントだったのかもしれない。

プロのマウンドでも存在感を発揮「いつでも目立つ、何か印象づける投球をしたい」

大舞台でも「そんなに緊張はしないと思います。していることに気付けていないだけかもしれませんけど」と言う強心臓の持ち主だ。プロとして登板を重ねる中でも自信を深めている。

「いいバッターを1人抑えれば自信になりますし、もちろん打たれることもあります。でも結果、抑えられているっていうことは、抑えられるだけの力があると信じている。自信を持って投げることが一番大事かな、と」

自信を深めるだけではなく、成長に繋がる課題も見つかった。

「真っ直ぐは入団当初から自信があって、あっさり打たれることはあまりないんですけど、変化球が投げられないことで真っ直ぐを狙われるケースが最近出始めている。ストレートを生かす変化球が大事になりますし、それが完成してくれば勝ちパターンで投げさせてもらえるようになると思います」

2年目になれば、打者から厳しいマークを受けることになるだろう。だが、それでも決して縮こまることなく、投げっぷりのいいピッチングを期待してもいいだろう。

「いつでも目立つ、何か印象づける投球をしたいなって思ってやっているんで」

今シーズン、活きのいいルーキー右腕が見せた活躍は、間違いなくDeNAファンに印象づけられたはずだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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