日韓の「朝鮮通信使」図録完成 「世界の記憶」登録3周年

日本側図録(左側の白い本)と、韓国側図録(右側の紺色の本)を手にする朝鮮通信使縁地連絡協議会の松原理事長=対馬市厳原町

 日韓の民間団体が共同申請した「朝鮮通信使」関連資料(日韓の計111件333点)が、2017年にユネスコ「世界の記憶」に登録されて10月31日で3周年。日本側の「朝鮮通信使縁地連絡協議会」(事務局・対馬市、縁地連)は、同日までに日本側の資料をまとめた図録を制作した。
 これで韓国側の「釜山文化財団」が登録1周年で制作した韓国側図録と併せ、ともに千部ずつが完成。いずれも資料を撮影した画像や解説文を付け両国語で訳されている。日韓ともに同サイズ。両団体は、両国の図書館などに図録を寄贈する予定としている。
 朝鮮通信使は、江戸時代の1607年から1811年にわたって朝鮮王朝が徳川将軍家に送った外交使節。日本側図録には、豊臣秀吉の朝鮮出兵で断絶した朝鮮王朝との国交回復を急ぐため、対馬藩が途中で改作した1607年の「朝鮮国書」(京都大総合博物館蔵)など48件209点が紹介されている。
 一方、韓国側図録には、現存する朝鮮通信使行列で最古とされる1624年の「仁祖2年朝鮮通信使行列圖(ず)」(韓国国立中央図書館蔵)など63件124点が収められている。
 縁地連の松原一征(かずゆき)理事長は図録完成に「外交を通じ(江戸時代の)260余年にわたり隣国間の平和が保たれたのは世界史的にもまれ。両国の青少年にこの歴史を学んでもらいたい」と強調。釜山文化財団の姜東秀(カンドンス)代表理事は「図録が完成し、大切な遺産を一目で見ることができるようになった」とコメントした。(緒方秀一郎)

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