<南風>文化人と職業

 コロナウイルスの影響で、さまざまな国による救済処置が取られている。

 私も、個人事業主として給付金を受け取った。その手続きの際、総務省の産業分類一覧から自分の職業を選択する項目があった。その選択肢に文化芸術に関わる者に該当する項目が、何度探しても無いのである。電話相談をして、何に該当するのか質問をすると「大分類はサービス業、中分類はその他のサービス業で」という回答が帰ってきた。

 果たして、サービス業なのだろうか。サービス業の中に、娯楽業という項目はあり、映画館や劇場を経営している者が該当する項目である。映画・ビデオ制作業もある。どこを探しても、俳優・演奏家・監督・舞踊家・画家・演出家がない。とてもショックであった。この国は文化芸術に関わる者を職業人として認識していないということになる。私たちは「好きでやっているのだから、良いではないか」という目で見られるのである。他国では文化芸術に関わる者は、もう少し社会的に高い評価を受けている。

 フランスで俳優をしている知人は、日本に帰ってくると、俳優が職業として認められていないことに大きく戸惑うそうである。フランスのプロの俳優は、劇場で演じることはもちろん、学校で教師として芸術教育を行っている。また、子どもたちもアート空間やアーティストの手法を就学前から高校まで一貫した継続プログラムで生徒たちは学ぶことができる。それもあり、アート(芸術)に携わる教師も社会的に大きな責任を負っている。日本での文化教育は、学芸会や芸術鑑賞教室も激減していて、芸術に触れる機会も少ない。ましてや、学内で、舞台芸術を学ぶことはないだろう。

 文化芸術関係者が、職業として認識され、学校教育にも取り入れられることを切に願っている。

(当山彰一、俳優)

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