「必ず助け出すぞ」 野営伴う大規模訓練 長崎市消防局と県警機動隊 緊迫の現場取材

土に埋まった丸太をロープを使って引き上げる救助隊員ら=長崎市、西海砕石

 土砂に埋まった要救助者はあと2人。「必ず助け出すぞ」「あきらめるな」。互いに鼓舞する救助隊員らの声が飛び交う。訓練といえども緊迫した空気が流れていた。大規模災害に備え、10月31日、11月1日の2日間、長崎市消防局の救助隊や県警機動隊の計47人が野営を伴う救助訓練を実施。訓練の現場を取材した。

 現場は採石場。10月30日午後1時半ごろ、大雨で地盤が緩み、土砂災害が発生。斜面崩壊により、作業員6人が生き埋めになっている。発生後、消防庁から県緊急消防援助隊に出動要請されたという想定だ。31日正午すぎ、現場に到着した隊員らはそこで被害の詳細を伝えられた。
 四つの小隊に分かれて活動。初日は午後9時すぎまで捜索を続け、2人(人形)を発見した。採石場に張ったテントで就寝し、翌朝7時から捜索を再開。午前9時までにさらに2人を見つけ出した。
 現場では、救助隊員らが巻き込まれる二次被害の防止を徹底していた。赤外線で周囲の土砂の異変を感知する「崩落監視システム」を設置。斜面がわずかでも緩むと大きな警報音が鳴り響く。音が鳴れば作業をやめ、その場から退避。この日は3回鳴ったが、うち1回は訓練用ではなかった。
 スコップなどによる掘削作業は3分ごとに交代していた。同じ作業を続けると疲れから効率が悪くなり、集中力も低下。常に全力を出し、作業効率を上げるための工夫だという。捜索中は指示だけでなく、「いいぞ」と互いに励まし合う声が途切れなかった。
 制限時間が迫る中、土の中に埋まっていた丸太をロープで縛り、隊員が息を合わせて引き上げた。「絶対この下にいるぞ」。作業ペースを上げた、その時だった。「危ない」と大きな声。念のためロープで固定しており難を逃れたが、掘削現場の脇にあった約1メートル四方の岩が、作業中の隊員らに向かってすべり落ちる寸前だった。そこで訓練の終了が告げられた。
 市消防局によると、2011年の東日本大震災時には16人、16年の熊本地震には79人、17年の九州北部豪雨時には134人、今年7月の熊本県南部の豪雨災害時には21人の救助、救急隊員らを派遣している。
 熊本地震など3度の被災地を経験した市消防局の高度救助隊、森啓介消防士長(36)は、地形や災害規模により「経験が生かされない場面も多い」と救助の難しさを指摘。常に目の前の判断力が求められるとし「長崎で大災害が起こらないとは限らない。(他県の災害を)『対岸の火事』にはせず、気を引き締めて訓練を続けていく」と話す。
 野営を伴う大規模訓練は8年ぶり。長崎市小江町の西海砕石の協力の下、実施された。

生き埋めになった人を発見し、手で土を掘り出す救助隊員と機動隊員=長崎市、西海砕石

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