「牛肉を控えても健康上のメリットなし」? 調査結果に揺れるアメリカ

 2019年10月、医学学術誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」が、「牛肉などの赤身肉を控えても健康上のメリットはない」という調査結果を公開し、菜食主義者や健康を気遣うヘルスコンシャスな人が日々増え続けているアメリカが揺れている。これまでの通説を覆すこの研究発表に対して、主要な国際機関からも反発がおきている。

健康のためには赤身肉やハムはNG、は間違いなのか?

 2019年10月、医学学術誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」で発表された健康に関する調査結果が、主要な国際機関が行なってきた健康維持へのアドバイスに反したことで、多方面から反発がおきている。

 「北米とヨーロッパの約5万4,000人を対象とした12件のランダム化比較試験で、赤身肉や加工肉の摂取量が少ない人における心臓病、がん、糖尿病のリスクは、統計的に有意または重要な関連性は認められなかった」という結果は、これまでの通説である「健康を気遣うならば、牛肉などの赤身肉やソーセージなどの加工肉の摂取を控えるべき」、「赤身肉や加工肉はガンのリスクを増やす」などを覆すものだ。

 この調査の共同責任者である、カナダはダルハウジー大学のブラッドリー・ジョンストン准教授はロイターに、「ほとんどの人はこれまでと同様に赤身肉や加工肉を摂取するのがベストアプローチだろう」とコメントしている。

多くの学者や国際機関がこの結果に反論。ステーキはダメ!

 この調査については、すでに米ハーバード、イエール、スタンフォードなどの大学の医師らが撤回を求めている。

 がんの予防のためにステーキ肉などの摂取を控えることを訴えてきた機関のひとつ、世界がん研究基金(WCRF)や、イエール大学リサーチセンターのデイビッド・カッツ氏は、「これは公衆の健康への理解にダメージを与えるもの」と反論。この発表により、ステーキや加工肉の摂取量が増えてしまうのではないかと懸念している。

 多くの学者がこの調査方法では結論は出せないと反論している中、この研究発表を掲載した「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」のクリスティン・レイン編集長は、「肉の摂取量を減らすべきという説には多くの理由があるはずだが、それをすれば健康状態は必ず改善される、という強固な証拠がないことも事実」と話している。

 牛肉やハムやソーセージは避けた方がいいのか、それとも健康維持には関係ないのか。次に新しい研究結果が出るまで、この論争は続きそうだ。

(2019年10月公開記事)

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