【世界のデジタル嗅覚技術2】防災訓練もリアルに演出!? 香り・嗅覚テクノロジーによる未来

 「香り」を使ったヘルスケア商材の事業化にチャレンジする著者がお届けする、香り×テクノロジーの未来。第2回目は香り・嗅覚テクノロジーを使った空間演出やエンターテイメントにフォーカスする。

 テクノロジーの進化によって、視覚だけでなく五感をフルに活用したよりリアルな体験が身近になりつつある。 テクノロジーで嗅覚に訴え、顧客に更にリアルな体験を提供している海外企業のプロダクト・サービスを紹介しよう。

Sensoryco

 Sensorycoは、五感に訴える空間演出技術を使ったサービスを提供する。 ミストシステムを展開するKoolfogから独立したスピンオフ企業だ。

 災害に対する訓練環境を、香りと煙、水によって本番さながらに演出するソリューションと同時に、4Dシアターやテーマパーク等のエンターテイメントシーンの体験を更に盛り上げる空間演出を提供する。 自社で独自の香りを開発、提供しており、aroma and scent generatorは、同社のコア技術の一つである。

 ミリタリー、火災(消防士の消防訓練等)、警察、様々なシミュレーションの訓練環境に合わせて開発され、屋内外の狭い空間から広い空間に対し様々な匂いを発生させる。

 Sensoryco自社ウェブサイトで公開する匂いリストには、アセトンやガソリン、その他化学物質、中には死体等、特殊環境や災害時で発生すると思われる様々な特殊な匂いが記載されている。様々な自然災害が頻発する昨今、災害に対する訓練も含めた備えは、更に重要度を増す可能性があり、このような五感の演出により再現性の高い訓練環境が期待できるそうだ。

FEELREAL

 続いて、VR技術と五感に訴える効果を組み合わせることで、より臨場感や没入感のある体験価値を提供しているFEELREALを紹介する。

 米国のスタートアップ企業FEELREALは、VRで匂いと触覚を体験できるマスク型デバイス「Feelreal」を販売している。

 匂いに加え、冷温風やミスト等、触覚も併せて体験でき、より臨場感あふれる3D体験を提供する。

VRヘッドセットデバイスに加え、VRコンテンツに合わせた匂いカートリッジも併せて販売している。 この商品は、VRヘッドセット下部に装着して匂いを発生させる「Scent Generator」によって、使用者に匂いを体験させる構造だ。 Scent Generatorには、9つの香料を含む取り外し可能なカートリッジを取り付ける。このカートリッジは、合計255種類の香料から組み合わせが可能で、視聴するVRプログラムに合わせて選択が可能だ。

VASQO

 VASQOは日本発の企業で、VR体験に匂いを連動させ体験価値を上げるサービスを米国で展開している。DMM.make Akiba発のスタートアップだが、現在、San Franciscoに本社を構え、VR体験に匂いを加えるデバイス「VAQSO VR」を開発している。同社HPによると、VAQSO VRは、世界で最も小さい香りVRデバイスとのこと。映像と匂いが連動することで、よりリアリティーのあるVR体験を実現し、付け替え可能な匂いカートリッジを5種類まで取り付けられる。香りのバリエーションは、女性のいい香りからゾンビの匂いまで、全15種類。デバイスの装着はバンド式のため、いろいろなHMDに取付けることが可能だそうだ。

 VAQSO VRは重さ125g程度で、VRデバイス下部に装着し、コンテンツと連動した匂いが放出される。昨年は、フランスで開催されるアートフェス「Annecy Paysages 2019」に、ラグジュアリーブランドの香水を手掛ける調香師Francis Kurkdjian氏や舞台監督のCyril Teste氏、映画監督のHugo Arcier氏とのコラボで、香りのVRインスタレーション「Eden」を展示して話題となった。

eScent

 最後に、イギリスのスタートアップが研究開発したeScentによるScent Bubbleを紹介しよう。

 香りのウェアラブルディスペンサーを、VRヘッドセットと連動させて使用することで、ブランド経験やイベントのバーチャル経験を強化することが期待されている。この香りディスペンサーにはAI搭載のセンサーが付いており、装着者の心身の状態やパーソナリティに合わせて、エッセンシャルオイルを装着者の周りにだけ拡散させ、香りのバブル、「Scent Bubble」が形成される。

 eScentの技術が実用化されれば、目的に合わせて様々なシーンでの活用が期待できそうだ。

 今回紹介した事例のように、最新テクノロジーと嗅覚によって今まで体験したことのない没入感や臨場感を味わうことができるようになった。これらの技術の発展によって、人々の体験がより豊かに向上することに喜びを感じつつ、上手に活用して新しい時代を過ごしていきたい。

© 株式会社メディアシーク