WECバーレーン:勝ったほうが世界王者! TS050ハイブリッド最終レースはトヨタ内対決に

 WEC世界耐久選手権に参戦しているTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は11月12~14日、バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われる2019/2020年シーズン最終戦に2台のトヨタTS050ハイブリッドで参戦する。LMP1規定車のラストイベントとなるWECバーレーンでは、トヨタの7号車と8号車によって争われているシリーズチャンピオン争いも決着し、今レースで勝ったほうがワールドチャンピオンに輝く。

 ル・マン24時間3連覇を達成したトヨタTS050ハイブリッドは2016年にデビュー。以来、WECで33戦に出場し15回のポールポジションと優勝18回を数え、さらにファステストラップも14回記録している。

 そんなTS050ハイブリッドは、2019/20年シーズン最終戦をもってWECのLMP1規定が幕を下ろすことから、その役目を終え2021年に新たに登場するLMHル・マン・ハイパーカーにバトンを渡すことになる。

 また、TS050ハイブリッドにとって最後の公式戦となるWECバーレーンは最終戦までもつれたチャンピオン決定の場所でもある。最終戦を前にした段階でのランキング首位は、ル・マンで優勝した8号車のセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組で、ランキング2番手につけるチームメイト、7号車のマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組を7ポイントリードしている。

 このため、週末のバーレーンでは今季のLMP1クラスで採用されている“サクセス・ハンディキャップ”において7号車が有利な状況でレースに臨むことになる。
 
 これについてTGRは、「システムはチームや車種ではなく、1台ごとにハンディキャップが決定されるため、それぞれのドライバーへの公平性という面から、我々チームはこのシステムの適用を支持します」とし、LMP1クラスのエントリーがトヨタの2台だけとなる今戦でも、引き続きハンディキャップシステムが適用されることに肯定した。

 ワールドチャンピオンを懸けて戦う2台のトヨタTS050ハイブリッドは、ともにハイダウンフォース仕様のエアロを装着。8時間に及ぶ決戦の火蓋は11月12日と13日の練習走行と予選を経て、14日現地14時(日本時間20時)に切られる予定だ。

TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタTS050ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)

■小林可夢偉「お互いに限界での戦いになると思う」

「我々はこのTS050ハイブリッドとともに、悔しさも喜びも経験しながら数々のレースで結果を残してきました。その歴史が終わってしまうことをチーム全員が寂しく感じています」と語るのは、TOYOTA GAZOO Racingの村田久武WECチーム代表。

「今週末は、7号車、8号車、どちらのドライバーが世界チャンピオンとして次世代のレースに臨むことになるのかをしっかり見届けたいです」

「今シーズン、6人のドライバー全員が素晴らしいパフォーマンスを見せてくれましたし、誰もがチャンピオンに値するドライバーだと思います」

「チームにとっても納得できるシーズンの締めくくりとなるよう、エキサイティングかつフェアな素晴らしいレースになることを楽しみにしています」

 この他、WEC最終戦バーレーンに臨むTGR WECチーム各ドライバーのプレビューコメントは以下のとおりだ。

■7号車トヨタTS050ハイブリッド

●小林可夢偉

「TS050ハイブリッド、そしてLMP1というカテゴリーでの最後のレースを楽しみたいと思っています。サクセス・ハンディキャップで我々が僅かに有利ではありますが、2台のTS050ハイブリッドによる良いバトルができるでしょう」

「7号車、8号車ともにチャンピオン獲得を狙っていますので、お互いに限界での戦いになると思います」

「勝った方がチャンピオンですが、もちろんそれは簡単なことではありません。8時間はとても長いですし、最後までトラブルがないよう、クリーンなレースをしていく必要があります」

●マイク・コンウェイ

「我々が今シーズンに臨むにあたり、ターゲットとしたのは、ル・マン24時間レース優勝とワールドチャンピオン獲得のふたつだった。ということで、今週末バーレーンで我々が目指すべきものは明らかだ」

「今大会はサクセス・ハンディキャップの点で我々が僅かに有利ではあるが、8号車がそう簡単に勝たせてくれないことは分かっているし、チャンピオンになるためには勝つしかない」

「我々はすでに今季前半のバーレーン戦で勝利を挙げており、その再現ができることを望んでいる。そうすれば最高の形でTS050ハイブリッドのラストレースを祝うことができるだろう」

●ホセ-マリア・ロペス

「昨年7月にバルセロナのプロローグでシーズンスタートを切ってから、ずいぶん長い時間が経った気がするよ。あれからさまざまなことがあったが、ついにTS050ハイブリッドに別れを告げるときが来てしまった」

「もちろん僕たちにとって、バーレーンでの最終目標はチャンピオン獲得であり、それはこのレースに勝てば間違いなく得られるものだ」

「バーレーンのコンディションは昨年のレースとそれほど変わらないと思うし、同じハイ・ダウンフォース仕様で臨むことになるので、準備は万全だ」

TOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタTS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組)

■8号車トヨタTS050ハイブリッド

●中嶋一貴

「LMP1カー、中でもTS050ハイブリッドでは本当に楽しく、興奮する経験を数多くしてきました。その中には喜びも悲しみも含めた、さまざまな想い出があり、決して忘れることはないでしょう」

「それだけに、TS050ハイブリッドでの最後のレースとなるバーレーン戦を楽しみにしています」

「8号車が勝つのは難しいとは思いますが、決して諦めることなく、7号車と最後まで全力で戦うつもりです」

●セバスチャン・ブエミ

「バーレーンではLMP1カテゴリーと、TS050ハイブリッド、ふたつの時代の終わりを迎えることになる。TS030ハイブリッドから始まった我々のLMP1での戦歴は本当に素晴らしく、それぞれの車両に注ぎ込まれた高度なテクノロジーと、その開発の速さという点でも驚くべきものだった」

「そしてTS050ハイブリッドは僕にとってとても大きな存在だ。僕たちはこの車両でル・マン3連覇を達成し、昨シーズンは世界チャンピオンにも輝いた」

「チームやこの車両とともに成し遂げてきたことを本当に誇りに思っているんだ。ただ、僕自身はつねに先を見ているし、まずは世界チャンピオン防衛へ向けて、土曜日の戦いに挑むよ」

●ブレンドン・ハートレー

「バーレーンには複雑な気分で臨むことになるだろう。とても大好きだったLMP1時代が終わってしまう寂しさと、それとは逆にこれからやってくるハイパーカー時代への大きな期待だ」

「今季2度目のバーレーン戦なので、誰もがコースはよく分かっているし、2台のTS050ハイブリッドによる接近戦になると思う」

「我々8号車はドライバーズランキング首位でこの最終戦に臨むことになりますが、ポイント差はとても小さく、勝った方がチャンピオン獲得となりますし、その瞬間を楽しみにしている」

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