「低床プラットフォームって、スゴイんです」新型オデッセイ開発者が語る“アルファード”とは違う独自性とは

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ホンダの老舗ミニバンブランド、5代目「オデッセイ」が、発売7年目の大掛かりなマイナーチェンジを実施した。2013年、超低床プラットフォームをウリにデビューした当時から比べると、フルモデルチェンジ並みにデザインを変更させたことで話題を呼んでいる新型オデッセイ。開発責任者にその大幅刷新の狙いとともに、強力なライバル「アルファード」との違いについても訊いてみた!

ホンダ 新型オデッセイのLPL(Large Project Leader:商品開発責任者)長 毅(ちょう・つよし)さん

大変な思いをして開発したけれど…ユーザーに伝わりづらかった「低床化」

1994年の初代デビュー以来、25年以上の歴史を持つホンダのミニバン「オデッセイ」。現行型の5代目モデルは2013年11月に登場している。

デビューから7年を経過した大規模なマイナーチェンジを担当したLPL(Large Project Leader:商品開発責任者)長 毅(ちょう・つよし)さんは、5代目がまだ開発途上にあった2010年にシャシー設計PL(Project Leader)として携わって以来、現在に至るまで常にオデッセイと関わり続けてきた。

5代目は、歴代モデルが一貫して継承してきた「オデッセイらしさ」、背が低くセダン感覚でスイスイ運転出来るという魅力を踏襲しつつも、全高を15cmあげて充分な室内の広さ・高さも両立させるという、相反する要件を盛り込んで2013年にデビューした。その際に肝となったのが、まさに当時シャシー設計担当だった長さんが取り組んだ「超低床プラットフォーム」の開発だった。

アルファード並みの広さを、セダン並みに乗り降りしやすい低い床で実現

5代目オデッセイの超低床プラットフォーム[2013年デビュー当時の広報画像より]

高級ミニバンといえば、真っ先に浮かぶのはLクラスの「トヨタ アルファード」。大きな車体に広い室内空間を確保し、多くのユーザーから支持を集めている。ただし乗車するにも階段状の段差を超えていかないとならないほど床も高い。3列シート全てにフラットな床を実現させるためには、どうしても床が高くなってしまうのだ。結果として重心が高くなったアルファードは、セダン車のようにスイスイと走る、という訳にはいかない。

その点でオデッセイは、背を上げても歴代同様に走りの良さは捨てたくなかったから、そのために低い床はマストの条件だった。

床下に収まるガソリンタンクや排気システムなどを極限まで薄くしてまで実現させた超低床プラットフォームに長さんは「いやあ、本当に地味な作業の積み重ねで大変だったんです」としみじみ当時を振り返る。

苦労の甲斐もあり、4代目と比較し室内高を10.5cmも拡大させ、アルファード並みの広さを実現させた5代目オデッセイ。2列目のみならず、3列目シートもグンと空間が広がった。それでいて床の高さはセダン車に近い約30cmにまで抑え、段差もないスムーズな乗降を両立させた。ちなみにアルファードと比べると、全高は25cm以上も低い。

「ただ、ユーザーにはその良さが伝わりにくかったんです」と長さんはそう反省する。

スポーティなアブソルートが主力になった「誤算」

長さんいわく、超低床プラットフォームの凄さは「凄いパフォーマンスのエンジン性能や凄い装備といった華々しい内容ではなかった」。わずか15cmとはいえ、モデルチェンジで一気に全高をあげたことも販売現場に少なからず戸惑いを起こさせたようだ。

2013年デビュー当時のオデッセイ アブソルート

2013年当時もうひとつの課題となったのが「新たな価値観の提案」として出した別グレード「アブソルート」が販売の主力となったこと。これは想定外だったという。快適な空間に相応しい快適な乗り心地のベースグレードに対し、アブソルートはちょっと(いやだいぶ)スポーティに過ぎる仕上がりだったのだ。

2013年12月のデビュー当時、自動車評論家の国沢光宏さんが書いた試乗レポートを読み返してみても、G(ベースグレード)は上質だと感心しながらも、アブソルートの硬い乗り味には疑問を呈している。

その後オデッセイ アブソルートも年次改良を重ね快適性を向上させたものの、イメージを払しょくするまでには至らなかったようだ。

オデッセイの良さをもっと解りやすく伝えるためのデザイン変更

2020年11月登場の新型オデッセイはリアまわりも実は大幅に変更されている

長さんは「マイナーチェンジで改めてオデッセイの良さをしっかり伝えたかったんです」と熱っぽく話す。

高級ミニバンに相応しい車格を表現すべく「通常のマイナーチェンジではやらない規模」でデザインを改善し、もともと丸みを帯びて柔らかいイメージだったところ、グッと立派に仕上げるとともに、インパネ回りも上質さを増した。ある意味わかりやすい高級感を増したとも言えるが、そうした商品力の向上も大事なところだ。

さらに乗り心地についても「2013年当時のベースグレードよりも、新型アブソルートのほうがグンと快適です」と太鼓判を押す。

「今回のマイナーチェンジでは、現場のセールスにもオデッセイの魅力を伝えるよう改めて指示を出しました」という。大きなサイズのミニバンに拒否反応を示す女性ユーザーにも、運転しやすいサイズと低さに抑えた点から理解を求めたいという。

アルファードは決してライバルではない

ホンダ 新型オデッセイのLPL(Large Project Leader:商品開発責任者)長 毅(ちょう・つよし)さん

近年、特にその強さを発揮し販売を伸ばすアルファードはライバルなのかと聞くと「確かにアルファードは良く出来たクルマですが、販売現場ではほぼ競合しない別のカテゴリーの存在です」ときっぱり話す長さん。あそこまでの大きさは不要と感じているユーザーに向け、オデッセイの魅力をもっとアピールしていきたいと語った。

[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)/撮影:森山良雄・島村栄二・Honda]