[Point of View]Vol.104 IP活用で放送クオリティ・コンパクトシステムによるライブ配信を実現~パナソニック映像「東京03単独公演ライブ配信」

txt:岩沢卓(バッタネイション) 構成:編集部

人気お笑いトリオ 東京03の単独公演をライブ配信

2020年9月に東京都内の劇場で4日間にわたって上演された第22回 東京03単独公演「ヤな塩梅」。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今回の公演は感染症拡大防止対策を徹底し、来場者数を限定して開催。インターネットライブ配信も実施された。

同公演の機材システムについて、パナソニック株式会社 メディアエンターテインメント事業部 プロAV商品企画部 マーケットコミュニケーション課主務の前田博氏と、パナソニック映像株式会社 テクニカルグループ 撮影チームの貝谷慎一氏にお話を伺った。

放送クオリティを確保したライブ配信の実現

(左)パナソニック映像株式会社 貝谷慎一氏、(右)パナソニック株式会社 前田博氏

――予定されていた全国上演が中止となり、公演を楽しみにしていた各地のファンにライブ配信という形で届けることになったとお聞きしました。ライブ配信の決定から実施まで短期間のなかでのシステム構築ポイントなどを教えてください。

貝谷氏:今回のライブ配信内容ですと、通常は中継機材車を用意する規模のシステム構築が必要となりますが、今回は感染症拡大防止の観点からもスタッフの人数を制限する必要があり、予算規模に合わせてシンプルな機材構成が求められました。

前田氏:今回、貝谷さんから相談を受けまして、当初はリモートカメラオンリーのシステムなどをお伝えしましたが、劇場公演ということもあり、カメラマンとVE(ビデオエンジニア)の操作性はこれまでのシステムと遜色ない形で行いたい、というリクエストがありました。

貝谷氏:お客さんを入れての劇場公演をライブ配信することから、照明などの演出も舞台用となるわけで、映像の明暗や色味の調整もリアルタイムで行う必要がありました。幕間の短時間で、カメラの設定を調整するためにはVEが違和感なく操作できること、しかもそれをコンパクトな機材で実施しなければならいため、機材の組み合わせには悩みました。

――たしかにリモートカメラのみでは、舞台上のアドリブに対応しにくいなどの制限がありそうですね。

制御用にカメラに接続されたLANケーブル

貝谷氏:そうですね。ライブ配信のチケットを購入して視聴してくれるお客様に可能な限り良いものを届けたいと考えた時に、カメラマンがオペレートする必要があると考えていました。

前田氏:そこで、ちょうど以前から準備していたカメラレコーダー「AG-CX350」のファームウェアアップデートで、タリーやコントロールを一括化ができるようになるため、そちらを使ったシステムはどうですか?とご提案しました。

貝谷氏:9月の公演でしたが、ファームウェアアップデートのリリースが8月末と、ギリギリのタイミングではありましたが、これで今までと同様な環境を構築できるという手応えを感じることができました。

――IPによって各種制御を統一することができたということですね。

リモートカメラコントローラー「AW-RP150GJ」と、ライブスイッチャー「AV-UHS500」

前田氏:今回のシステムでは、ライブスイッチャー「AV-UHS500」と、リモートカメラコントローラー「AW-RP150GJ」の連携により、機器や配線を追加することなくIPによって制御することを実現しています。

貝谷氏:「AG-CX350」クラスのカメラで、タリー制御から映像調整までを外部機器を接続せずにLANケーブル一本で実現できるのは本当に驚きでした。

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ファームウェアアップデートにより、AG-CX350でのタリー表示が可能になった。タリー赤色(PGM)、タリー緑色(PVW)
※画像をクリックすると拡大します

――設営・撤収の労力もずいぶん変わりますよね?

貝谷氏:今回の会場では、オペレーションブースからカメラまで200m近くのケーブルを引き回す必要があったのですが、各種制御をIPで行いオペレーションブースのPoE HUBからカメラまでをLANケーブル1本で繋ぐことができたため、設営が非常に簡単でした。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/pov104_Panasonic_05_625.jpg

※画像をクリックすると拡大します

――外部機器の接続がないことで、トラブルの発生ポイントも少なくできるということですね。

前田氏:先程ご紹介したシステムと併せて、今回のシステムでは「AV-UHS500」と「AW-RP150GJ」の連携機能を使って、「AW-RP150GJ」から「AV-UHS500」のAUXバスをリモート制御することで、VEモニターに出力するカメラ映像の切り替えをVEの手元にある「AW-RP150GJ」から行うことが可能なのもポイントです。

VE用のAW-RP150GJ

貝谷氏:今回、映像信号はSDIケーブルを使っての接続でしたが、スイッチャーのAUXバスを活用することでVEモニターの切り替え用に別途セレクターを用意せずに済んだことも大きいです。

――省スペースで接続もシンプルになりつつ、直感的な操作が可能になっているわけですね。

貝谷氏:そうですね。一番重要なのは、良い映像を配信することなので、それを実現するためにカメラマンやVEが直感的に操作できる環境を構築することが大事でした。カメラマンにとっては、VEに調整を任せられることでフレーミングに集中することができますし、タリーが液晶に表示されますので、タリーが消えた瞬間に別のカットを撮りに行けることは大きなポイントですね。

カメラマンが操作するAG-CX350 2台の間に配置されたAW-UE150K

――複数台カメラの場合は、どのカメラがオンエア中を示すタリー表示がカメラマン、出演者ともに重要になります。今回は最終的にリモートカメラも混ぜたシステムになったとのことですが、カメラ構成や制御方法について教えてください。

貝谷氏:「AG-CX350」4台とリモートカメラ「AW-UE150W/K」2台の2種類のカメラで運用しました。新型コロナウイルス感染症拡大防止対策の観点からカメラマン同士の距離を確保する上で、「AG-CX350」の間に「AW-UE150W/K」を配置して、カメラマン同士の距離を確保しながら必要なカメラポジションを確保することができました。また、カメラマンが客席に入っている場合、そこからお客様までの距離も確保する必要があり、リモートカメラであれば、客席数をできるだけ減らさずに配置できることも採用ポイントになりました。

前田氏:今回のシステムでは「AV-UHS500」のタリー情報をIPで伝送し、「AG-CX350」と「AW-UE150W/K」のタリー表示を制御しています。「AW-RP150GJ」はシステム内に複数台組み込むことが可能なので、「AW-UE150W/K」のパン・チルト・ズームコントロール用に1台、6台分のカメラ映像を調整するVE用として1台を使用しています。

ブース内ではスイッチャー、リモートカメラ、VEが並ぶ形で運用されていた

――今回のシステムを運用してみて、将来的な拡張のイメージなどあれば教えてください。

貝谷氏:今回は、映像信号はIP化せずに運用しましたが、IP伝送への対応機器も増えてきており、信頼性の高さも実感できたので、よりフレキシブルに組み合わせたシステム構築も考えていきたいです。

Panasonic Pro Video公式YouTubeチャンネルでは、今回紹介いただいた東京03単独公演「ヤな塩梅」配信の裏側が紹介されている

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