コラム凡語:癒やしと融和

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 抑えきれない心の高鳴りをのぞかせた。歓喜の支持者たちを前に若々しく小走りで登場し、米大統領選の「勝利宣言」をしたバイデン氏である▼あと10日余りで78歳を迎える米史上最高齢の次期大統領は、壇上に立つと落ち着いた力強い口調で語りかけた。「分断ではなく融和を目指す」。何度も繰り返し、国民に結束を説く姿がこの国の現実を物語っていよう▼思い返せば4年足らず前、「みんなで団結して米国を再び偉大に」と就任演説をしたトランプ氏だったが、約束は裏切られた。異論を敵視して対立をあおり、党派、人種間など社会の分断が深まった▼そんなとげとげしさ、息苦しさに疲れ、復元力がバイデン氏側へ傾いたのだろう。だが、そんなトランプ流に前回以上の7千万票超が集まったのも事実だ。融和への道は険しい▼その意味でも頼みに映ったのが、バイデン氏の長い政治経験と懐の深さではなかったか。幼少期からの言葉の詰まりを自己訓練で克服。30歳で上院議員となるが、妻と長女を交通事故で亡くし、息子2人のため地元から1時間半かけ議会へ電車通勤したという▼なお負けを認めず、敵意をむき出しにする相手側と、全ての国民に向け「今は米国を癒やす時」「互いの主張に耳を傾けよう」と諭した。その願いは届くだろうか。