北海道を再エネの大地へ㊦課題の送電

けいナビ

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今回のテーマは前回に引き続き、「再生可能エネルギー」。北海道では2年前、胆振東部地震でブラックアウト(=全域停電)が発生。また先月には、高レベル放射性廃棄物いわゆる核のごみをめぐって、寿都町や神恵内村が国の文献調査の受け入れを表明し、大きな波紋を広げている。電力の安定や安全・安心をめぐる議論が巻き起こるなか、北海道で相次ぎ参入を目指す風力発電。その可能性と課題を探る。

北海道でも洋上風力発電の計画が

これは大手電力会社のJパワー(電源開発)が北海道桧山地方のせたな町に置いている風力発電の監視拠点。

このエリアでは陸上の風車28基、合わせて約5万キロワットを発電している。風車のある現場に案内してもらうと、まるで台風が通過しているかのように風が強い。このような気候が風力発電に適しているという。

Jパワーはこのエリアに新たな風力発電の建設を計画している。建設場所は「洋上」。発電の規模は、苫東厚真発電所の火力1基分に相当する国内トップクラスだ。

この海域では東京のコスモエコパワーによる大規模計画も明らかになっていて、最終的に入札で決まる事業者の選定に向けて、Jパワーは積みあげた「陸上」の実績やノウハウをアピールする。

北海道の洋上風力発電の計画

しかし、こうした大規模な洋上風力発電の計画が相次ぐ一方で大きな課題がある。

課題は送電 カギを握る“ノンファーム型接続”とは

風力発電が行われている地域は電気の消費量が決して多くなく、送電線が細い。そこに大規模な発電施設ができても、送電に問題が発生するという懸念がある。

横軸は時間。送電線を流れる電気の量一定ではない

そこで経済産業省が導入拡大へ検討を進めているのが、“ノンファーム型接続”。送電線を流れる電気の量は一定ではない点に着目し、送電線に空きがある時間帯に再生可能エネルギー発電事業者の接続を認める新たな方式だ。

資源エネルギー庁の小川要課長は「これまでは送電線自体を増強して、線を太くしなければならないと考えられていて、その間再エネ事業者は参入を待たなければならないといった事情があった。ノンファーム型接続が認められると、設備の増強を待たずに、早期に接続できるようになる」と話す。導入の目標とするのは2023年。年明けから接続を希望する事業者の応募が始まる。

このノンファーム型接続で、北海道での再生可能エネルギーの導入は増えるのか。北海道大学大学院地球環境科学研究院の藤井賢彦准教授は「今まで使われていない枠組みを使うことで、再生可能エネルギーを入れようという動機にはなる。ただし、長期間にわたってノンファーム型接続が続くという担保がないと事業として成り立たないので、そこが爆発的に増えるかどうかのポイントになる」と話す。

北電グループを代表してノンファーム型接続への考えを述べた北電の藤井裕社長

ノンファーム型接続は、北海道では北海道電力ネットワークという送電専門の会社が担当するが、北電の藤井裕社長は先日、グループを代表し「国の政策として、できるだけ再生可能エネルギーを入れていくということなので協力したい。安定供給を大前提にノンファーム型接続導入の検討を進めたい」と話した。

再エネで消費者の負担は増えるのか?

電気代の明細書をよく見てみると、賦課金(=再生可能エネルギー・発電促進賦課金)という文字が。太陽光や風力などで発電した電気を買い取るのは電力会社だが、再生可能エネルギーを社会全体で普及・拡大するため、その費用は利用者全員で負担しようという考え方に基づくものだ。

一般的にコストが高いと言われる再生可能エネルギーがこれから増えていくと、この賦課金も増えて電気代が高くなるのではないか、という疑問も生まれる。

NPO法人北海道グリーンファンドの鈴木亨理事長によると、現在1kWh当たり2.98円くらいの賦課金は、2030年度までは増え続け1.25倍程度になるという。一方この間、電力会社の電気の調達コストが下がりつつあることから、賦課金の上昇は続くものの、電気料金トータルでは安くなる可能性もあるという。さらに、10年~20年が経つと固定価格買取制度(=FIT)が終わることで、賦課金の価格も下がると話す。

エネルギーの地産地消 鹿追町で先進的な取り組み

十勝の鹿追町。ことし8月から、全国に先駆けた新たな取り組みを開始した。

8億円を投じて町の中心部、半径300メートルのエリアに、44本の電柱と総延長3キロの電線を自前で整備。合わせて設置した太陽光発電所で作った電気を、町内の主要な公共施設に送り届ける取り組みだ。

自営線で太陽光発電所と結んだのは、役場や病院、町民ホール、福祉施設のトリムセンターなど合わせて9つの公共施設。各施設では、使用する電気の3割を太陽光発電所からの電気で賄っている。削減できる電気代は年間580万円。

さらに、避難所に指定されている場所には蓄電池にためてある電気が送電され、停電状態でも電気が使える状態になる仕組みだ。2年前、北海道でブラックアウトを引き起こした胆振東部地震の教訓から、災害時には蓄電池からの電気を避難所となる施設に集中的に送る方針を決めた。住民は24時間安心して避難所生活を送ることができるという。

鹿追町の喜井知己町長は「自然災害はいつどこで起きるか分からない。やはり外部に依存しないエネルギーのあり方、エネルギーの自立分散、これをしっかり、小さな自治体でも追及していく必要がある」と話す。

町では2007年から、酪農家から出る家畜のふん尿を活用したバイオガス発電を始めた。発電した電気は全て売電し、年間2億4,000万円ほどの収入を得ている。今後の課題は、再生可能エネルギーで作った電気の送り先を、いかに広げていくかだ。

喜井町長は「再生可能エネルギーの資源としては十分、町内全域の電気を賄える力はあるが、自営線を町内すべてに張り巡らせるというのはコストの面で非常に難しい」と話す。電線を整備するための費用は1キロ当たり1億円。町の財政状況を考えると、町内全域への整備は今のところは難しい。ただし、今後は“地域電力会社”を設立し、地元で作った電気を地元で活用できる形にまで進めたいという。

電気は私たちが毎日使うもの。しかし、そのエネルギーのあり方は未来の世代にまで続く。1人1人が責任を持って考えなければならない問題だ。
(2020年11月14日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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