コラム凡語:競馬場改修

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 1971年秋、菊花賞の行われる京都競馬場(京都市伏見区)に向かう途中、この年の皐月賞と日本ダービーを制した牡馬ヒカルイマイのことを考えていたのは劇団「天井桟敷」を主宰した故寺山修司さんである▼名もない農家で生まれ、母乳が足りなくて牛乳で育ったこの馬に菊花賞を勝たせ、三冠馬にしてやりたかったという。けれども、けがで出走できず、2冠に終わる▼スポーツ紙に連載したコラムをまとめた「競馬場で逢(あ)おう」シリーズで読んだ。単なる予想にとどまらず、競馬に詩情を見いだしていた。「馬にかこつけて、自分にかけているんだ」ともつぶやく▼騎手では、逃げるか、追い込むしかできない不器用な故吉永正人さんが、ごひいき。83年、あのミスターシービーで皐月賞に臨むと、3冠騎手となる夢を抱き、直前のコラムに、勝つのはこの馬と書いた▼これが、絶筆となった。秋の3冠達成を、寺山さんは目にしていない。あの世で、さぞ残念がっただろう▼菊花賞のある京都競馬場は、3冠を巡るそんなドラマが完結する舞台だ。今年は三冠馬に加えて、3冠の牝馬が誕生した。今月からの大規模改修で、2年半もレースがないのは、本当に寂しい。改修後、寺山さんのようなファンのたたずめる天井桟敷が、どこかにあればと思う。