<社説>学術会議任命拒否 首相は真相明らかにせよ

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 首相官邸が日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否した問題で、安全保障政策を巡る政府方針への反対運動を先導する事態を懸念し、任命を見送ったことが分かった。 これまでの政府の説明に疑念を抱いてきた国民の多くは「やはりそうだったのか」と受け止めたはずだ。菅義偉首相は直ちに自らの言葉で真相を明らかにすべきだ。よもや臨時国会の閉会をもって幕引きだと菅首相が考えているならば、国民は到底納得しない。

 それにしても驚くべき拒否理由である。官邸が任命を拒んだ6人は安全保障関連法や共謀罪、辺野古新基地建設に対し、政府方針とは異なる立場にあり、異論を唱えた人もいた。そのことをもって学術会議内で反対運動を主導しかねず「公務員としては適任ではない」と首相官邸は考えたのである。これは憲法で定められた言論の自由に対する重大な挑戦である。

 学識者や、その研究活動に対する冒?(ぼうとく)だと言わざるを得ない。知見に基づき、政府方針や施策に対して異議を申し立て、修正を求めることは学問の自由の範疇(はんちゅう)にあり、それが侵害されたのだ。任命を拒否された会員候補の一人で、新基地建設に異議を唱えた岡田正則早稲田大教授(行政法)は「思想信条に直接干渉しても良いという感覚が政府内でまん延しているのか。恐ろしい権力の行使だ」と語った。その懸念は当然だ。

 異論を廃し、政府方針に寛容な主張のみを受け入れ、施策を進めるような態度を貫くのならば、あしき全体主義を招くことになる。私たちは全体主義による悲惨な結末を75年前の敗戦で経験したのであり、その反省に立って日本学術会議が生まれたはずだ。

 そもそも首相官邸は日本学術会議の意義を認識していないのではないか。政府の諮問に対し、賛否を含めさまざまな観点から議論し、答申するのが学術会議の役割だ。

 政府方針に反対する研究者や論者を排除し、政府の意に沿う者だけで学術会議を構成するなら、諮問・答申の手続きは意味を失う。政府の任命拒否は日本学術会議の意義と歴史的背景を無化するものだ。

 菅首相はこの問題で何も語っていないに等しい。臨時国会で「総合的・俯瞰(ふかん)的な活動を求める観点から判断した」「多様性が大事」と説明するだけで、なぜ6人の任命を拒否したのか明確に答えていない。これまでの学術会議に「多様性」はなかったと言いたいのか、理解に苦しむ。

 日本学術会議事務局幹部は11日の衆院内閣委員会で、任命を拒否された6人について、再び政府に推薦することは排除されないとの認識を示した。しかし、拒否理由を明らかにすることが大前提だ。

 自民、立憲両党は菅首相が出席する予算委員会の集中審議を月内に実施する方針で一致した。菅首相はこの場で任命権者としての説明責任を果たすべきだ。