コロナ禍によってスケジュールが大幅に変更された2020年のF1グランプリ。ヨーロッパと中東以外での開催が難しくなったF1は、その代替えとしてヨーロッパにあるサーキットでレースを開催している。そのなかには、F1を初めて開催するサーキットもあれば、何年かぶりに復活というサーキットもあり、最近F1を見始めたファンにとっては、馴染みがないところも少なくなかった。
そこで、今年新たにカレンダーに加わったサーキットを紹介してきた『F1サーキット巡り』。この緊急企画も、いよいよ今回が最後。最終回の今回お伝えするのは、11月13~15日に開催される第14戦トルコGPの舞台であるイスタンブール・パーク・サーキットだ。
イスタンブール・パーク・サーキットは、2005年の初開催に向けて建設されたサーキット。イスタンブールはボスポラス海峡を隔ててヨーロッパ大陸とアジア大陸にまたがる世界唯一の都市で、サーキットがあるのは旧市街地があるヨーロッパ大陸ではなく、アジア大陸となる。
サーキットは、ヨーロッパ大陸から直線距離で約50km離れたサビハ・ギョクチェン国際空港の北東にある丘陵地帯に作られ、イスラム風の建造物をピットビルに採り入れている。設計したのは、1990年代後半から2000年代にかけて世界各地に新設されたサーキットを手掛けたヘルマン・ティルケ。
ただし、同時代にティルケが手掛けた多くのサーキットが平坦で、ストレートの前後に低速コーナーを組み合わせたレイアウトが多かったのに対して、このイスタンブール・パーク・サーキットはほかのサーキットとは異なり、起伏に富み、高速コーナーを備えた独特の特徴を持つ。
開催初年度と2年目は10万人以上の観客で盛り上がったトルコGPだが、駐車場がサーキットの中に集中していたため大渋滞を引き起こすなどの不手際もあって、3年目以降は客足が遠のき、2011年を最後にF1の表舞台から姿を消した。
9年ぶりの復活となった今回は、どれくらいの観客が詰めかけるか楽しみだったが、新型コロナウイルス感染症がヨーロッパで再び拡大していることもあり、無観客で行われることになった。
無観客レースとなったことは残念だが、イスタンブール・パーク・サーキットでのF1復活には、もうひとつの楽しみがある。それはF1屈指のチャレンジングなサーキットを、現在のF1マシンがどんなスピードで駆け抜けていくかだ。特に名物である高速コーナーの“ターン8”での挙動は見ものとなることだろう。