“コロナ差別”の第二波どう防ぐ? 法的対応と成功事例の共有を

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。10月19日(月)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、令和メディア研究所主宰で白鴎大学特任教授の下村健一さんが“コロナ差別対策”について述べました。

◆"コロナ差別”第二波をどう防ぐ?

新型コロナウイルス感染症対策分科会の「偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ」の会合が開かれ、全国知事会がまとめた調査結果を報告。内閣府によると、コロナ差別に対し10自治体が専用窓口を設置し、ほか27自治体が既存窓口で対応していると回答したということです。

今回の会合では各所から多くの資料が持ち寄られたなか、日本弁護士連合会(日弁連)の情報に関心を持っていたという下村さん。日弁連では電話相談などで多くの事例を収集。その法的評価から、さまざまな適用ができることがわかったとか。例えば、感染者が出たことで会社に避難メールが殺到しサーバーがダウンしたら「名誉毀損」や「業務妨害」。コロナで入院していたんじゃないかと言いふらせば「人格権侵害」など、差別を受けたといってもその内容はさまざま。具体的な被害を訴えることで法的対応も変わってくるため、下村さんは「具体的にどういうことで声を挙げられるのか知っておくことは重要」と言います。

このワーキンググループを含め、下村さんはコロナによる差別問題で気になっていることがあるそうで、それは現状の呼びかけが効果的なのかということ。「差別意識ではなく、感染防止や自己防衛意識の行き過ぎといった意識から結果的に差別になってしまうことがある。そういう行動を差別と思ってやっていない人たちに対し、『差別をやめよう』というスローガンは効くのか」と危惧。

もう1つ、「正しく恐れよう」という言葉も「何が正しいかわからない、(ワクチンなど)解決策もないなかでこの言葉が言われるたびに"正しいことを知らなくちゃ”という気持ちになり、生半可に得た情報で正しいと決めつけてしまうことなどが心配」と案じます。

◆必要なのは、成功事例の共有

ではどうすればいいのか、下村さんは「成功事例を共有していくこと」と提言。例えば、感謝や激励で誹謗中傷のメッセージ量を圧倒することなどが今こそ必要で、今回のワーキンググループでもクラスターが発生した高校が立ち直った成功例が紹介されたとか。

非難が殺到した後に、激励の声に立ち直っていったその高校では、再開前に全校生徒に向けてメッセージが送られました。

それを読みあげた下村さんは「辛いことがあるたびに、逆にそれを教材としていく、そういうことを社会で共有したら他の学校もメッセージを出そうと思える。こういったことが大事」と主張すると、著述家の北条かやさんも日本のメディアは「成功事例などポジティブなメッセージが全然ない。それもいたずらに不安を煽る」と賛同します。

過去に下村さんはトイレットペーパーなどが市場から消えた際、空の棚よりもメーカーに在庫があるなど具体的な情報を出すべきと訴えていましたが、コロナ差別問題においても「情報が具体化していくと不安からくる差別はその分減っていく」と言います。ではメディアはなぜそれができないのか、下村さんは「思考停止しているというか、『差別はやめよう』、『正しく恐れよう』といった言葉を繰り返し言っていればいいと思ってしまっている。そこに踏み込まないと」と提言。

また、キャスターの宮瀬茉祐子が「正しい情報を仕入れ、安心を実感するレベルまで持ってこないと、固く閉ざされた心はなかなか溶けていかないのかな」と感想を述べると、下村さんは"正しい情報”に言及。「正しい、間違っているの二択ではなく、(音量調節するダイヤルの)ツマミを操るような柔軟さで情報に対処していかないと」と話していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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