リーグ3連覇逃した西武が首脳陣のテコ入れしなった訳 渡辺GMが語る意図とは?

西武・渡辺久信GM【写真:宮脇広久】

渡辺GMが説明「一昨年、昨年の連覇は打撃コーチ陣のお陰」

リーグ3連覇を逃した西武が11日、来季2021年のコーチングスタッフを発表した。1軍はバッテリーコーチを2軍担当と入れ替えただけで、ほぼ不動。テコ入れも外部招へいもなく、辻発彦監督5年目のシーズンに臨む。

この日最大のトピックは、2010年のドラフト1位で19年限りで現役引退した大石達也氏が2軍投手コーチ、元外野手の高山久氏が2軍打撃コーチ、元内野手の鬼崎裕司氏が2軍内野守備・走塁コーチに就任したこと。1軍絡みの異動は、42歳の野田浩輔2軍バッテリーが1軍に昇格し、入れ替わりに52歳の秋元宏作1軍バッテリーコーチが2軍に回るだけだ。

渡辺久信GMは「今年は終盤に追い上げ、CS進出の可能性が見えてきたところで敗れた。その悔しさは球団を含め全スタッフ、選手が感じている。必ず来季やり返すつもりだし、悔しさを知る首脳陣がやってくれると思う」と説明した。あえてコーチングスタッフの顔ぶれを変えず、リベンジのチャンスを与えたというわけだ。

バッテリー担当の入れ替えについても、「ダメだから交代という考えは一切ない。野田がファームでだいぶコーチらしくなってきたので、1度は1軍の勝負がかかった所でコーチングをさせてみたい」と語った。

もともと、辻監督を支える1軍コーチングスタッフの顔ぶれは毎年、変動が極めて少ない。就任1年目の17年の1軍コーチ陣のうち、現在球団に在籍していないのは、18年限りで退団した橋上秀樹氏(17年は野手総合コーチ、18年は作戦コーチ)と、投手コーチ在任中の17年6月に急逝した森慎二氏だけ。馬場敏史作戦兼守備・走塁コーチと阿部真宏打撃コーチの2人は、来季を含め5年連続で1軍コーチを務める。その他もファームやフロントに異動し、引き続きチームを支え続けている。

“辻内閣”史上最大の変化といえば今年、現役時代に西武の主力選手として活躍した豊田清1軍投手コーチと小関竜也1軍外野守備走塁コーチが、いずれも15年ぶりにチームに復帰したことだろう。

同じ顔ぶれで戦うことで阿吽の呼吸が生まれるメリットも…

外部招聘が少ないのは、資金的な問題もあるのだろうが、長年同じ顔触れで戦っていることによって、首脳陣間、首脳陣と選手の間に阿吽の呼吸や信頼関係が生まれているのも確か。野手出身の辻監督は今季、基本的に西口文也投手コーチに継投を任せていた。試合後に「投手コーチから『代えます』と言われて、『えっ!?』と思った」とコメントしたことがあったほどだ。

その中で、黒田哲史1軍内野守備・走塁コーチは、「球界随一の三塁コーチ」と判断力を高く評価されるようになり、豊田コーチも新外国人ギャレットにフォークを伝授し投球を幅を広げさせた。有能なコーチも育っている。

一方、西武打線は今季、辻監督就任以来3年連続でリーグトップの座を守ってきたチーム打率が.238(リーグ5位)、総得点が479得点(同4位)に転落。このタイミングでコーチ陣のテコ入れを行ってもおかしくなかったが、渡辺GMは「一昨年と昨年は、打撃コーチ陣のお陰で連覇できた部分がある。1年悪かったからといって、どうこう言うべきではないと思う」と擁護。その上で「彼らも、自分が置かれた立場はわかっている。来季また強い打線を作るべく努力してくれると思う」と付け加えた。

次期1軍監督の有力候補ともいわれる松井稼頭央2軍監督は、就任後2年が経過しスタンバイ。仮に1軍が来季も優勝を逃すようなことになれば、“辻政権”の存続は保証の限りでなくなる。渡辺GMの言葉からも、「来季は待ったなし」の緊迫感が伝わってくる。

投手陣は、チーム防御率が今年で3年連続リーグワースト。6年目の高橋光が初めて規定投球回数を突破し、8勝8敗、防御率3.74と成長のあとを見せたが、それでも先発陣は手薄だ。現楽天の涌井、岸、現マリナーズの菊池らエース級がFAやメジャー移籍で続々と抜けた穴を埋めきれないでいる。

こちらは2軍からの底上げが急務。そういう意味で、新任の大石2軍コーチにかかる期待も大きい。渡辺GMは「ファームには20~25歳のイキのいい投手がたくさんいる。来年は1軍でチャンスをつかんでほしいし、ファームでしっかり指導してほしい」と語った。

辻監督就任以来、チームはレギュラーシーズンで2位、優勝、優勝、3位と抜群の戦績を残している一方で、日本シリーズには1度も進出していない。“辻ファミリー”は崖っぷちの来季、どんな形で底力を見せるだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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