着実に前進しインディペンデントライダーのトップに位置する中上貴晶/MotoGP第13戦レビュー(2)

 MotoGP第13戦ヨーロッパGPで中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)が、第2戦アンダルシアGPに続いて、MotoGPクラスベストタイとなる4位に入賞した。前戦テルエルGPではポールポジションからスタートし、トップを走りながら1周目に転倒に終わっていた中上だが、ヨーロッパGPの舞台となるバレンシアは、昨年、右肩に負ったケガの治療のため欠場しており、MotoGPクラスではルーキーイヤーの2018年以来のレースとなった。加えて、初日から雨続きで予選まではトリッキーな路面コンディション。さらに決勝日はドライコンディションとなるなど、全員が同じとは言え、難しい条件のレースとなった。

 そんな状況の中、中上はフリー走行総合4番手でQ2に進むと、Q2では終盤のアタックラップ中に転倒を喫してしまったものの、3番手、2戦連続でフロントロウを獲得する。最後の転倒もプッシュしすぎた結果で、攻める気持ちは健在だった。

 ドライコンディションとなった決勝は、1周目にジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)に交わされ4番手、2周目にはミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)に交わされ5番手に下がってしまう。常にトップが見える位置で周回を重ねた中上だったが、オリベイラの前になかなか出ることができず、その間に先行する3台とは少しずつ差が広がって行った。パッシングのためにラインを外すと転倒のリスクが高いためか、今回のレースは全体的にパッシングシーンが少なく、それはトップグループでも同様だった。

 レース中盤にオリベイラをようやくパスした中上は、そこからペースを上げてトップ集団との差を縮めていく。この時点でトップに立っていたミルは逃げ切りに入っており、2番手のアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)、3番手のポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)もポジションを争うことなく、周回を重ねていた。表彰台を目指して、最後までプッシュした中上は、終盤にポル・エスパルガロとのギャップを縮めていく。いっぽう中上に交わされたオリベイラは、ついていくことができず、あっという間に後方に下がって行った。

 27周のレースの26周目に全体で2番手となるレース中の自己ベストラップを記録した中上は、ポル・エスパルガロにコンマ8秒差まで迫るが、勝負をしかけるには至らず、4位でゴールした。ていねいなスロットルワークに定評がある中上は、タイヤへの負担も少ない走りで、レース後半戦までタイヤをキープできると言われている。今回のレースは改めてそれを証明する結果となった。

■チーム監督も中上を称賛「彼はとても速いことを証明した」

 インディペンデントライダーでトップとしてパフクフェルメに戻ってきた中上は、自己ベストタイとなる4位に入賞したものの、その表情にはあと一歩で表彰台を逃した悔しさがにじんでいた。アンダルシアGPではトップとの差は6.113秒だったが、ヨーロッパGPでは2.194秒差。今回はスタートから常に上位で周回を重ね、前を行くライダーは一人も脱落していない。

 レプソル・ホンダ・チームのアルベルト・プーチ監督は、「中上はフロントロウからのスタートだったので、強いポジションにいた。でも、ほかのライダーにつかまってしまい、前のライダーたちとともに後続を引き離すことができなかった。終盤へ向けていいペースをつかみ、彼はとても速いことを証明した。レース中盤でもう少し距離を縮めることができていたら、表彰台に上がるチャンスがあったかもしれない」とレース後に語っている。

 また4位に入賞した中上は、以下のように語った。
「すばらしいリザルト、そしてすばらしいレースでした。最後までいいペースをキープし、最終ラップの最終コーナーまで全力を尽くしました。今日のレースは本当にポジティブでした。初表彰台獲得まで本当にあと少しでした。表彰台獲得は果たせませんでしたが、インディペンデントライダーのトップでゴールすることができました。すでに気持ちは、来週のバレンシアGPに向いています。来週もこの勢いをキープし、次戦バレンシアGPではすばらしい結果を残せると信じています。今週は、すべてのコンディションでいい走りができました。チームのすばらしい仕事に感謝したいです」

 2020年は新型コロナウイルスの影響で変則的なスケジュールとなり、2週連続で同じコースのレースが続くことが多い。そんな中、中上は1週目から2週目のレースにかけて着実な前進を図ってきた。シーズン再開後の12戦で9人のウイナーが誕生し、のべ15人のライダーが表彰台を獲得している。中上が10人目のウイナーになれるのか、第14戦バレンシアGPはまもなく開幕する。

2020年MotoGP第13戦ヨーロッパGP予選で3番手となった中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)

© 株式会社三栄