億越え投資家・エナフンさん「SNS情報に踊らされる人の問題点」

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「勝てない」と思った時は、きっと原因があります。前回に引き続き投資のスキルアップにつながるポイントを、投資ブログ「エナフンさんの梨の木」で知られ、独自のバリュー投資法の解説書『エナフン流 VE(バリューエンジニアリング)投資法』(日経BP)を著したエナフンさんこと奥山月仁さんに聞きました。


勝ちやすい場所で勝負する

――会社員投資家がスキルアップを目指す際に重要なポイントは何だと思いますか?

まずは自分に有利な投資法を見つけることが大事だと思います。
例えば、日中仕事をしている会社員は相場を見続けることができません。環境的には、ところどころ画面を遮られながらゲームをやるようなもので、断片的な情報だけで売買を判断することになりますから、あらゆる情報を見ているデイトレーダーやアルゴリズムなどを相手に勝つのは至難の業だと思います。私もかつて短期トレードをしていた時期もありますが、目隠しありのゲームは不利だと気づき長期投資に切り替えました。

――ビギナーほど中長期が良いということですか?

いいえ、初心者、上級者ということではありません。不利な状況で戦っていることに気付いていないかもしれないことが問題だということです。短期と中長期は流派のようなもので、会社員で短期トレードを極めようと考える人もいるだろうと思いますし、実際、稼いでいる人もいます。ただ、条件的には険しいため、スキルアップという視点から見ると、勝ちやすい場所を選ぶ方が良いと思います。

短期のほうが値動きがありますから、本能的にそちらを向いてしまう気持ちもわかります。一方、長期はあまり面白くありません。面白さの質が違うというか、短期投資がスポーツやゲームのような楽しさだとすれば、長期投資は盆栽いじりの楽しさのような気がします。

――盆栽(笑)。短期、長期のどちらに立つかによって楽しみ方が変わるということですね。

ゲームの本質が違うのだと思います。同じものを見ているのですが、短期と長期は違うゲームなのです。長期投資は、究極的には日々の指数変動すら気にならなくなります。先日出版した本(『エナフン流 VE(バリューエンジニアリング)投資法』(日経BP))も、私が実践している長期投資のポイントや実例などを凝縮しているので、短時間で読む分には擬似体験しながら楽しんでもらえると思いますが、実際には3年や5年の時間をかける投資です。

私は3~5年で株価2倍以上を狙える銘柄を買いますし、その中には3年待たずに2倍になる銘柄もありますので利益の面では大きいと思います。ただ、それでもやっぱり「長い」と思う人はいますし、「1日で5%上がるかも」と目先の利益を狙いに行ってしまう人も多いですよね。

仕事で得た知見を生かす

――長期で投資する会社員投資家にとって有利な点はどんな点でしょうか?

短期で動く株価を読むのは難しいのですが、長期的には株価と業績は連動します。ここは熟練すれば見えやすくなると思います。

大事なことなのは、自分の強みを生かすことです。会社員は自分の仕事の業界について詳しいと思います。これは会社員投資家に有利な点で、仕事をしながら積み上げてきた知識、経験は活かせるでしょう。例えば、自分の業界で「あの競合が手強い」と感じる会社は、業界内で有望な会社の可能性があります。そういう会社の株を買うのは投資としてはアリですよね。趣味がある人は趣味の世界に目を向けて、業界構造などを勉強することもできると思います。

――投資テクニックを学ぶことも大事ですが業界について勉強することも重要なのですね。

そうですね。チャートや指標も大事ですが、長期の場合は過去の業績やコスト体質などを見る方が役に立つと感じます。業界についての知識量が増えるほど、資金を増やし、リスクも取れるようになると思います。

――リスクの取り方や資金管理もスキルアップの重要なポイントですね。

そうですね。最初は誰でも下手で当たり前ですから、少額の資金で練習するのが良いと思います。練習しながら知識を増やし、徐々に投資額も増やします。

ただ、資金が少ないとリターンも小さくなるため、じれったくなります。大きく増やそうと思って信用取引で勝負する人も多いでしょう。リスクや資金の管理という点では、知識が増えないまま投資額を増やしてしまうのが危険なのです。逆に、知識が増えているのに資金を増やさないのももったいないですよね。自分の知識や技術を客観的に見るのは難しいですが、知識に応じて資金を増やしていくイメージを持っておくことが大事だと思います。

気づきをメモして「見える化」

――知識を増やす良い方法はありますか?

方法は人それぞれで、向き、不向きなどがあると思いますが、知識を増やすのに適したタイミングはあると思います。それは、有望株を見つけた時です。初心者でも、本などを参考にして銘柄を探索すると「もしかして、あの本で書いてある割安成長株って、これのことか?」と、何か見えた感覚が生まれます。その時こそ勝負時です。その銘柄の業界について調べたり、成長要因や割安に放置されている原因を調べたり、徹底的に勉強すると良いでしょう。狙い通り、その株が大きく上昇したら、1つ上のステップに上がったことを実感できると思います。

自分が学んだこと、気づいたこと、買った株のことなどについて、ノートなどに書いておくことも大事です。私自身も、ブログ(エナフンさんの梨の木)を書くようになってから自分の考えや気づきなどを整理しやすくなりました。

――それもスキルアップの方法として真似できそうですね。

はい。文章としてまとめると、ぼんやりと気づいていたことが言語化できます。また、株を長く保有していると、買った理由を忘れて、勝手にストーリーを後づけで作ってしまうことがあります。2倍まで持つつもりで買ったにもかかわらず、SNSや掲示板などで悪評を目にして「ここが限界だな」「売ってしまおう」などと考えてしまうことがあるのです。せっかく努力して調べた株なのに、SNSなどで見かけたちょっとした情報に惑わされて安易に売ってしまうのはもったいないですよね。そういう失敗を防ぐためにも、買った理由を書いておくと良いと思います。

――SNSを中心にあらゆる情報が飛び交う時代だからこそ、情報に踊らされないようにすることが大事ですね。

「2ちゃんねる」開設者の西村博之さんの言葉で、「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」というものがあります。
まさにその通りで、SNSなどに溢れている情報も、嘘を見抜ける人じゃないと使いこなすのは難しいと感じます。嘘を見抜く力は努力でどうにかなるものではなく、その人の本質的な部分かもしれません。「疑ってかかろう」と言っても、素直な人はきっと信じてしまうでしょう。そのせいで失敗する可能性があるなら、SNSを見ないというのも1つの手です。

そもそも、誰がどの銘柄を買っているか知ることが勉強だとは思いません。誰かを参考にするにしても、銘柄ではなく、考え方や着眼点などを学ぶことが大事ですし、それもスキルアップにつながると思います。

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