異例の「取締役GM兼監督」 数字から見る楽天・石井一久監督が解決すべき課題とは?

来季監督に就任が決まった楽天・石井一久GM(左)と立花陽三代表取締役社長【写真提供:楽天野球団】

ソフトバンクに大きく負け越し、最下位オリックスも負け越し

楽天は12日、来季の監督に石井一久GMが就任することを発表した。編成を司るGMもこのまま兼任し、肩書きは「取締役GM兼監督」に。編成、現場の指揮の双方を掌握する“全権監督”として2013年以来のリーグ優勝を目指す。一方で今季就任したばかりだった三木肇監督は2軍監督へと配置転換となった。

この日、オンラインで行われた会見で石井新監督は「ポテンシャルはあるチーム。ただ勝負弱いところがあり、今シーズンはそれが出てしまったと思っています。来シーズンは弱点を克服し、作り替えて骨太のチームにしたいです」「今までのチームの良さもあるので、そこは壊さずに、弱いところを作り直して、いろいろなところに対応できるチームにしたい。打ち勝つだけではなく、守り勝つこともできる野球、チームにバリエーションを持たせることで実現できると考えています」と語った。

では、今季の楽天のチーム成績などから、来季に向けて解消しなければならない課題を検証してみたい。

今季120試合で55勝57敗8分の借金2でリーグ4位に終わった楽天。開幕直後は3カード連続で勝ち越して首位に立つなど好調で、8月下旬までソフトバンク、ロッテと激しく首位の座を争っていた。ただ、終盤に入ると、4連敗や3連敗など、大型とは言わないまでも細かい連敗が多くなった。

ロッテには15勝8敗と大きく勝ち越しながら、ソフトバンクには9勝15敗と大きく負け越し。ソフトバンクとロッテがカモにしていた最下位のオリックスに10勝12敗2分と負け越し、西武にも10勝12敗2分。日本ハムにも勝ち越したとはいえ、11勝10敗3分とほぼ5割だった。

打撃成績はリーグ屈指も、響いた太田光の戦線離脱

ソフトバンクにとっての楽天、日本ハム、オリックスのような“お得意様”を、ロッテ以外に作れなかったのは痛かった。勝てる相手に取りこぼさない、という手堅い戦い方はリーグ優勝に向けて必須な要素となるだろう。

今季の楽天はチーム打率.258、チーム得点557はリーグトップ、チーム本塁打112本はリーグ2位と攻撃力は申し分なかった。長打率も、出塁率もリーグトップだ。強いて言えば、盗塁数67個がリーグ最少、盗塁企図数もリーグ最少だったため、機動力はもう少し使いたいところか。

一方で許盗塁数は日本ハムに次いで多い91個を許している。盗塁阻止は30個で、チーム全体の阻止率は24.8%。これはリーグワーストの数字となっている。ただ、太田光捕手は盗塁阻止率.333でリーグトップ。太田は9月2日に登録抹消、同14日に再登録されたが、同27日に左肩関節唇損傷で再び離脱。太田が戦線を離れた9月以降、チーム成績が下がった。しっかりとした扇の要となる存在、そして正捕手の離脱を補えるだけの第2捕手の育成も必要か。

そして楽天最大の課題は投手力だ。チーム防御率4.19はリーグ5位。西武の4.28と大きな差はなく、リーグ優勝したソフトバンクとは1点以上の開きがある。先発陣の防御率4.19は西武に次ぐリーグ5位、救援防御率はオリックスに次ぐこちらもリーグ5位と、課題であることは明白だ。

先発陣ではトレードで獲得した涌井秀章投手が史上初の3球団最多勝となる11勝をマークしたものの、岸孝之投手と則本昂大投手の成績が思ったほど伸びず。出遅れた岸はシーズン中に2か月ほどの離脱もあった。7勝0敗と負けなしでシーズンを終えたものの、登板は11試合止まり。則本昂も一時離脱があり、18試合で5勝7敗に終わった。この2人が本来の成績であれば、また状況も変わったかもしれない。

絶対的守護神の不在、リリーフ陣の脆さで増えた逆転負け

また先発に転向した松井裕樹投手が苦戦。9月下旬には中継ぎに再び配置転換された。昨季まで守護神を務めていた松井の先発転向に伴い、空位となったクローザーの座も最後まで固まらなかった。

開幕当初は森原康平が務めて好投していたが、開幕から1か月ほどで調子を落とした。その後は助っ人のアラン・ブセニッツ投手や辛島航投手が任され、シーズンの最後には、再び松井がその座に戻ってきた。

逆転負けの多さが救援陣の“脆さ”を表す。楽天は逆転勝ち23試合に対して、逆転負けは32試合と負けが9試合多い。Aクラスのソフトバンク、ロッテ、西武は逆転勝ちの方が多く、楽天を含めた下位3球団は逆転負けの方が多くなる。楽天の救援投手の黒星は20。これに対してソフトバンクとロッテは14、西武に至っては8しかない。

石井GMもこの日の会見で「後ろ(リリーフ)のピッチャーから構築していくのがセオリーではある。僕の(GMとしての)力不足でできなかったから、逆転負けが多かったり、いろんなことが起きた。整備に時間をかけて、来年に臨みたい」と掲げており、救援陣を含めた投手陣の整備は最重要課題となるだろう。

編成面も司る“全権監督”として船出した石井一久取締役GM兼監督。果たして今後チームをどう改革していくのか。そして、2013年以来のリーグ優勝に導けるか。その手腕に注目だ。(Full-Count編集部)

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