ボルボの稼ぎ頭 コンパクトSUV「XC40」の“クレバー”な走行性

モーターを搭載する“電動化”は世界中のメーカーで急速に進んでいます。ただそれにはいくつもの方法があり、味つけの違いによって、メーカーならではの個性を生み出しています。今回のボルボXC40 T5もまさにそれがわかる1台です。


ボルボに乗るとなぜかホッとします

例に漏れずボルボの電動化は着々と進んでいるようです。今回のテストカー、XC40も現在では、すべてのグレードが“ハイブリッドモデル”と、なりました。そんな中からセレクトしたT5はプラグインハイブリッド(以下、PHV)のモデルです。ここから先は少しだけややこしいのですが、まずは整理してお話したほうがいいと思いますので、少しだけご辛抱を。

現在、ボルボの大切な稼ぎ頭であるXC40は大きく分けると、B4、B5、そしてT5と3タイプに分けられます。電動化ということで考えると、すべてがハイブリッドなのですがB4と、そのハイパワーモデルのB5は、マイルドハイブリッドと呼ばれるタイプ。モーターはエンジンのサポート、スターター、そして回生時には発電機などの働きをするシステムです。ただしモーターだけでの走行はできません。残るT5は、前述したようにPHVです。外部充電が可能ですし、モーターはエンジンのサポートや発電だけでなく、モーターのみの走行もできます。

XC40全体を俯瞰してみると、B4にはFF(前輪駆動)もあれば4WDもあり、価格面でもリーズナブルなベースグレードです。その価格帯は409万円から539万円と広く、売れ筋といえます。

コンパクトなボディの軽快さを感じるサイドのデザイン

つぎにB5ですがエンジン出力などがB4よりパワフルです。B4のエンジンが197馬力であるのに対し、B5のエンジンは、排気量こそ2Lと同じですが250馬力を発生します。B4のスポーツバージョンというポジションで、価格は589万円の1タイプです。

そしてT5はというとPHVであり、価格も649万円の1タイプですが、シリーズでもっとも高額となっています。実はこのT5、正式にモデル名を書くとXC40リチャージ・プラグインハイブリッドT5インスペクションという感じで、やたらと長いのです。現在のところT5はPHVだけということになります。

期待を裏切らない走り

さっそくT5で走り出してみました。ちょっと走り出しただけで、1.5Lの直列3気筒ターボエンジンと電気モーターが実現する走りの良さが伝わってきます。エンジンとモーターの役割を、それぞれにしっかりと果たしていて、本当に自然でシームレスなフィーリング。モーターだけ、エンジンとモーターなど、適時に切り替えながら都内の混雑路をストレスなくゆったりとした気分で走ることができるのです。

派手さはありませんがスッキリとしたレイアウトは好感度が高いです

以前からボルボに対するイメージとして“クレバー”といったものを抱いているのですが、本当にこのPHVは穏やかで平和な気持ちになります。

今度は首都高速に乗り入れます。首都高速では、本線への合流路が短いため、フル加速で対応することが多いのですが、それまで優しかった走りの表情が、ちょっぴり変わります。アクセルをグッと踏み込むと、グググッとトルクが急激に向上してきて、背中をグングン通してきます。あっという間に合流スピードに達したところで、平和に本線に乗り入れます。まったくとろさなどは感じません。

シートバックの大きさもちょうどよく、状態をしっかりとホールドしてくれます

しかし、その感覚はといえばジェントリーとでもいいましょうか、本当に平和なのです。まだ本格的なワインディングまでは未体験ですが、十分にスポーティな走りをしながらも、乱暴さというかワイルド感がないんです。どこまで行ってもさりげなく、でも気が付けばそれなりに速い。そんなフィーリングのため、少しぐらい頑張って走ったところで、ボルボに対するクレバーなイメージにも変化はないのです。

むしろ、T5より軽量であり、エンジンもパワフル、おまけに4WDといったスペックのB5の方がワイルドさはあります。走りに対する方向性に違いがあるのですから、この辺はディーラーでしっかりと試すことをお勧めします。

乗っているだけで心地よく

さて高速に乗り入れてからというもの、本当に平和なドライブが続きます。都内から向かったのはアクアラインを渡った木更津方面。アクセルをグッと踏み込んで追い越し体勢に移らなければ、基本的にモーターが主役の静かな走行が続きます。加速時にはエンジンをサポートしながらスムーズに速度が上がります。一定速で走り出せばバッテリー残量にもよりますが走りはモーターが担当します。

時々存在を主張するエンジンですが、ほとんど作動していることが分からないのです。よく聴いていないとエンジンが付いていることを認識できないほど、この1.5Lの3気筒エンジンは予想以上に静かなんです。

意外にも良く出来たエンジン。存在は主張することが少ないのですがいい仕事をします

実はこのT5には走行モードとしてできるだけモーターだけで走行する「ピュア」モード、、エンジンとモーターを適切に切り替えて走る「ハイブリッド」モード、そしてエンジンをフルに働かせ、それをモーターでアシストして力強い加速が可能な「パワー」モードの3つがあります。このなかで基本となるのはもちろん「ハイブリッド」です。自然な走行感覚は、なんとも心地いい乗り味を提供してくれます。アクセルをガツンと踏み込みさえしなければ、モーターとエンジンがバランスよく走りを担当しながら、快適なクルージングが続きます。

もちろん、全車速追従機能付のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)はオン、車線をキープするパイロット・アシストも作動させるほぼ完璧、といった穏やかさで走れるのです。なぜでしょう、遅いクルマに追いついても、追い越そうなどとは思わないし、多少の渋滞があっても“ま、ゆっくりいこうか”とこちらまで穏やかになるんです。そんな気分になるのは私だけかもしれませんが、よほど急いでなければ、なすがままという感じですね。

帰路、木更津のアウトレットで充電スポットを探すと急速充電だけしか発見できません。そうなんです、T5は200V16Aの普通充電のみ。スマホのアプリで普通充電を探すと近くに普通充電施設はあるのですが、わざわざ充電しても満充電までに2時間ほどかかる可能性があります。

そこまでゆっくりしているわけにも行きませんし、アウトレットで散財しそうで、それも怖いのです。本来ならば、自宅で深夜に充電しておいて、短距離の買い物などでは「ピュア」モードに入れ、モーターだけで走るといった使い方が理想なんです。

相変わらずボルボのラゲッジルームは容量も確保され、そしてスクエアで使いやすい

「ま、このままハイブリッド走行のまま、大人しく帰りましょうか」となってアクアラインに乗り込みました。夕方の混雑が始まる直前、平和な気分のまま帰ります。

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