総理の任命拒否問題、世界のアカデミーの懸念に

 日本学術会議の梶田隆章会長らが12日、記者会見し、日本学術会議として総会手続きを経て日本学術会議法に基づいて会員に推薦した6人を菅義偉総理が任命拒否した問題に関し、日本学術会議としてはその理由とともに、6人を任命するよう引き続き総理に求め続ける考えを改めて示した。

 また、梶田会長は会見で100か国以上の研究機関などが所属する「国際学術会議」のダヤ・レディ会長からも、今回の件を懸念する手紙が届いたとし、世界のアカデミーの懸念になっているとした。

 会見で日本学術会議の小林傳司アドバイザーは「学術会議の規定では、まず(会員は)210名という規定があり、それを満たすべき105名を推薦した。そして99名の任命がなされているが、なぜ6名が任命されなかったのか、(その理由の説明とともに)任命していただきたいと申し上げている」と法に沿った対応を求めた。

 一方、組織改革については、日本学術会議がより役割を発揮するための検討課題を5点に絞り、検討を進めるとともに、年内に中間報告的なものをとりまとめ、機能強化に向けた方策を井上信治科学技術政策担当大臣に報告するとした。

 5点の内容は(1)時代を先取りした、人文社会科学系を含む3部制の仕組みを活かして 分科会活動を強化することにより、分野横断的かつ複雑化した現代の諸課題に対応し、中長期的な視点から、立体的・学際的で、質の高い提言を発出できる「提言機能の強化」のための方策等を検討する。

 (2)広く国民と対話し、相互理解を促す機会を通じて「情報発信力を強化」する方策を検討する。(3)現会員による新会員推薦プロセスの透明性を向上させ、説明責任を強化する工夫、取り組みを検討する。

 (4)国際学術団体との連携をさらに強化し、国際学術団体における日本の学術の存在感と影響力を向上させるための方策を検討する。またこれらの活動を支えるために必要な事務局機能についても検討する。(5)DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進による効率化を通じて、広報や国際発信の機能を強化する方策を検討する。また、これらの活動を支える広報専門スタッフの採用やデータ収集・分析門スタッフとして「学術調査員」を若手研究者のキャリアパスの一部に位置付ける等の方策を検討する、としている。(編集担当:森高龍二)

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