いながきの駄菓子屋探訪20茨城県古河市「中村商店」創業90年、卓球台が置いてある店

全国約250軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は茨城県古河市の「中村商店」です。

卓球台が置いてある駄菓子屋

昔は小学校の近くに1軒は必ずあって、子どもたちの放課後の社交場になっていた駄菓子屋。この位置関係は現在も同様なので、インターネットで調べても出てこない時は小学校の周辺を地道に歩く作戦が有効です。自分の店がある埼玉からは、利根川を渡ってすぐの茨城県古河市。今回はこの地域に的を絞り、古河市の各所にある小学校の周囲を当たってみることにしました。

探し始めて3校目、名崎小学校に面した通りで見つけた、足場が組まれネットで囲まれた店舗。外観ではまったくわからなかったのですが、逆にそれが気になり中を覗いたところ、なんと駄菓子屋でした。店内は、昔どこかで嗅いだことのある懐かしい香りがしています。おばあちゃんの家だったか、学校のどこかの教室だったか・・・例えようがありませんが、それが昔ながらのお店であることを引き立てていました。

とてもユニークなのが、「卓球台が置いてある駄菓子屋」という点。ガレージを改装した飲食スペースに卓球台があり、手ブラでもお店で球を買えばラケットを貸してもらえて自由に遊べるというシステムです。車の往来があるので中学生以上からの貸し出しとのことですが、保護者同伴なら小学生もOKということで、我々親子はお言葉に甘えて思う存分遊んでしまいました(笑)。

昭和5年開業、親の代から90年も続いている

中村商店は、昭和5年(1930年)に現店主の両親が日用品を扱う商店として、現在の場所から少し離れた地域で開業したそうです。昭和13年(1938年)に名崎小学校の移転とともに現住所に移り、菓子類を取り扱い始めたとのこと。代替わりした際に日用品を取りやめ、店舗の半分を婦人服、もう半分を駄菓子と文房具、学校指定用品の売り場に改装。その後、飲食できる場所も整備し、現在に至るそうです。

「うちは至って普通の駄菓子屋。何か聞かれたってそんなに特別なもんじゃないから、面白いことなんて言えないよ(笑)。世の中いろんなことがあった中で、親の代から90年も続いてるっていうのは、なかなかすごいかな?歴史は大切だけど儲かる商売でもないし、後継ぎがいるわけでもないし、私も歳が歳だし、本当にあと何年できるかわからない。けど、まだ体も元気だし、子どもたちの相手するのが楽しいから、それが生き甲斐!ボケるのが先か死ぬのが先かわからないけど、看板も直してきれいになることだし、まだまだ続けたいね」

朝7時から開いているのは、学校の持ち物を用意し忘れた子が朝買いに来られるように。卓球台のレンタルは、店主の息子さんが使っていた卓球台を店先に放置していたところ、「これで遊びたい」というリクエストがあったのがきっかけだそうです。どこまでも子どもたちに寄り添おうという店主の優しさが作ってきたこのお店。名崎小学校の児童のためにも、何よりご自身のためにも、末永く続いていってくれることを願ってやみません。

中村商店

住所:茨城県古河市尾崎4314-1

電話:0280-76-3988

営業時間:平日7:00~日没、土日10:00~日没

定休日:不定休

[All photos by Atsushi Miyanaga]

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