人懐こく進化した家畜ウサギ 東北大学が脳内遺伝子発現の変化を解明

東北大学大学院生命科学研究科の佐藤大気博士後期課程院生と、ウプサラ大学、ポルト大学の研究者からなるグループは、野生・家畜ウサギ間で発現量に大きな変化が見られる遺伝子群を特定することに成功した。

動物の家畜化は「人為選択」とも呼ばれ、人間の手によって人への懐きやすさなど特有の形質変化を急速に引き起こす進化プロセスである。特にウサギは、比較的最近(約1400年前以降)に家畜化されており、短期間で脳や行動の進化を遂げたと考えられている。

本研究者らは、ウサギの家畜化過程で遺伝子の発現量に変化が生じたことで、脳の発達や行動に変化が起きたと考え、野生・家畜ウサギの脳内における遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、両者のあいだで脳内発現量が顕著に変化している遺伝子群を特定することに成功したという。

まず、家畜ウサギでは、偏桃体でドーパミン関連遺伝子群の発現増加がみられた。ドーパミン関連遺伝子群の偏桃体での発現は、動物の恐怖反応に関わることから、家畜ウサギの人への懐きやすさに関連している可能性が示唆された。

また家畜ウサギの海馬では、繊毛関連遺伝子群の顕著な発現低下が観察された。繊毛関連遺伝子は、海馬での神経新生にも関わっていることから、脳の構造的変化に関連する可能性があるとしている。

このように、家畜化の歴史が比較的浅いウサギを用いて、急速な脳の変化や行動進化の背後にある遺伝子発現の変化を検証した本成果は、進化生物学における重要なテーマの一つでもある、動物の家畜化に伴う変化の遺伝的基盤の解明に向けた示唆を与えるものだと言える。

論文情報:

【Genome Biology and Evolution】Brain transcriptomics of wild and domestic rabbits suggests that changes in dopamine signaling and ciliary function contributed to evolution of tameness

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