<社説>コロナ第3波か 冬に向け先手の対策を

 冬本番を控え、新型コロナウイルスの感染が急増している。14日には全国で新規感染者が1737人となり、過去最多を更新した。県内でも13日に49人確認され、ほぼ3週間ぶりに40人台になった。流行の「第3波」との指摘もある。

 政府は「緊急事態宣言」を出す段階ではないとしている、観光や飲食業を支援するGoToキャンペーンも維持する。

 しかし政府の新型コロナ感染症対策分科会は「このままでは急速な感染拡大に至る可能性が高い」と警告している。特にクラスター(感染者集団)対策の強化は急務だ。政府はPCR検査を拡充し、感染者の早期発見で感染を拡大させない方策や冬に向けた予防策の周知を図らなければならない。先手先手の対策が必要だ。

 分科会で指摘されたのはクラスターの多様化だ。これまで発生箇所は医療機関や高齢者施設などが多かったが、飲食店や外国人コミュニティーに広がっている。大学や職場などでのクラスターも飲み会や寮生活で多く生じている。繁華街から始まった感染が家庭に広がるケースも多い。那覇市内のスナックでも従業員や客19人のクラスターが発生した。専門家は欧米で起きているような爆発的流行もあり得るとして一層の警戒を呼び掛ける。このまま手をこまねいていては集団感染が医療の逼迫(ひっぱく)を招きかねない。

 夏の「第2波」に比べ、中高年の感染者が増える傾向にあるとも言われる。重症化リスクの高い高齢者はより注意をしなければならない。冬は寒さを避けるため密閉した室内で換気が滞るほか、湿度が下がると飛沫(ひまつ)が空気中を長く漂い、感染しやすくなる恐れがある。季節性インフルエンザとの同時流行も防ぐ必要がある。

 政府は患者増を見据え、身近な病院や診療所などで検査や診察を行えるようにしたが、対応できるのは全国で2割にとどまる。体制の拡充も急務だ。

 沖縄県内は、警戒レベルを判断する七つの指標のうち、新規感染者数が1週間で計208人、入院患者による病床使用率が58%で第3段階の「感染流行期」になっている。全国的な感染増で県外からの移入も懸念される。県は空港でのPCR検査など水際対策に本腰を入れる必要がある。

 ウィズ・コロナ時代に向けコロナ対策と経済活動の両立は当然必要だ。全国知事会は自治体がコロナ対策に充てる臨時交付金がすでに6千億円以上不足しているとして、第3次補正予算で1兆2千億円の追加と医療体制整備に充てる交付金の増額を求めている。政府は地方の要望を最優先するべきだ。

 県内の観光業とそこから広がる産業を支援するためにも県民向けの県内宿泊や県産品購入への補助をさらに拡充するなど、域内で経済を回していく施策ももっと広げたい。

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