【速報】ボクシングWBO世界ウェルター級タイトルマッチ テレンス・クロフォード vs ケル・ブルック

スーパースターひしめく中量級にあって、玄人筋からの絶大の支持を受けるのがウェルター級のテレンス・クロフォード(米国=36戦36勝27KO無敗)。
元IBF世界王者のケル・ブルック(英国=41戦39勝27KO 2敗)を挑戦者に迎えた、WBO世界ウェルター級タイトルマッチの結果をお伝えする。

[WBO世界ウェルター級タイトルマッチ テレンス・クロフォード対ケル・ブルック|エキサイトマッチ~世界プロボクシング|スポーツ | WOWOWオンライン]

P4P(パウンドフォーパウンド)トップクラス常連のクロフォード

クロフォードは現役のWBO世界ウェルター級チャンピオン。ここまで36戦36勝27KOというパーフェクトな戦績を誇り、体重差を考えない場合の最強ボクサーを想定する、いわゆる パウンド・フォー・パウンド(P4PまたはPFP) の上位に常に名前が上がる、人気と実力を兼ね備えたスターだ。
現在はウェルター級で戦っているが、元々はライト級からスタートしており、ここまでに3階級制覇を実現しているうえ、スーパーライト級時代には、主要4団体(WBO WBA WBC IBF)の王座統一を果たしている、正真正銘のスーパースターなのである。

基本はサウスポーだがオーソドックススタイルでも戦える器用さを備え、恵まれた才能とパワーでねじ伏せるというより、相手の出方や戦力を緻密に計算し、最適な闘い方を都度選択できる頭の良さを持つ。その柔軟な闘い方ゆえに、なかなか攻略法が見出せない、相手選手からしたら相当にやりづらいボクサーだろう。

ライト級あがりだけあって、上背は173cmとさほど高くない(ただしリーチは188cmとかなり長い)。対するケル・ブルックは175cmと少しクロフォードより大きいが、大した差ではなく、2人の体格差はほとんどない。
パワー、スピード、テクニックに関しては、クロフォードが上であると思われるが、ケン・ブルックもかつての世界王者。強打者だがパワーに頼らず、基本に忠実なバランスの良いボクサーだ。下馬評では遥か格上とみなされているクロフォード相手でも、全く歯が立たないということはないだろう。

試合結果→4ラウンドTKOで決着!

スピードと華麗なテクニックで当代無敵と謳われた ロマチェンコが王座から陥落 したことで、相対的に評価が高まっているクロフォードだが、逆にロマチェンコでさえ足を掬われたのだから彼にもひょっとして?という予想というか淡い期待がケル・ブルック戦に寄せられていたかもしれない。

実際、3ラウンドまでのケル・ブルックはよく戦った。予想外にオーソドックス(右構え)で戦いの口火を切ったクロフォードに対し、真正面から立ち向かったブルックはクロフォードのパンチをかいくぐりながら距離を潰してきた。元世界チャンピオンの矜持を見せたと言っていい。ポイント的には少なくとも3ラウンドまでは互角もしくはブルックの優位といってもよかったかもしれない。

しかし、4ラウンドに入り、ブルックのパンチの挙動やタイミングを読み切ったのだろう、サウスポースタイルに戻したクロフォードがぐいぐい前に出てくる。そしてブルックの左ジャブに合わせるように放った(まるで猫パンチのようにも見えるほど、軽く突き出したような)右拳がブルックの頭を強かに揺らし、ブルックはロープ際まで吹っ飛ばされてしまった。

その後暴風のような勢いで襲いかかったクロフォードの勢いにブルックはなすすべもなくレフェリーストップ。

クロフォードのKO防衛となった。

ウェルター級でのスーパーファイトか、一階級上げて機会を待つか?

今回の勝利で、クロフォードの評価はさらに上がることは間違いないが、いよいよ彼の今後の去就≒クロフォードが次に戦う相手を誰にするかは、ボクシング業界の大きな注目ポイントとなってきた。同じ階級のスーパースターとしては、生ける伝説マニー・パッキャオ、交通事故から生還したエロール・スペンスJr.がいるが、彼らとのファイトであれば、仮に無観客試合であってもペイパービュー(PPV)で大きなビジネスとなる=スーパーファイトになることは間違いない。しかし、ボブ・アラム率いるトップランク社にプロモーションを任せているクロフォードと、トップランク社と敵対するプロモーターのマネージメントを受けるスペンスやパッキャオのマッチメイキングは簡単ではない。

そしてさすがのクロフォードも2021年には34歳になるわけで、残りの選手寿命を考えたら、ビッグマネーを稼げるファイトをするにもあまり猶予時間が多くないことは明白。スペンスやパッキャオと試合できればよし、その見込みがないのなら 階級を上げてスーパーウェルターで4階級制覇やチャーロ弟(が ミドル級に転向する前に)あたりとの対戦を狙鵜という選択肢を選ぶかもしれない。

ファンからすれば、スペンス、パッキャオ、チャーロ弟(ジャーメル・チャーロ。双子の兄でミドル級王者はジャーモール・チャーロ)の誰と戦ってくれても見逃したくないファイトにはなるだろうが、クロフォード本人からしたら 上の階級の王者(=チャーロ弟)と戦うよりは今の階級で自分より小柄かつ年上のパッキャオと戦うほうが、リスクも少ないし(パッキャオが一番知名度あるので)金にもなると考えているに違いない。

いずれにしても、無敵のクロフォードとはいえ歳は取るわけだから(その意味でも40歳を超えているパッキャオは完全なる衰えを自覚してしまったら戦わず引退してしまうかもしれない!)、なるべく早いうちに どうするのか決めてしまいたいところだろう。
今回の完全勝利で、クロフォードの決断を迫る時計の針は一気に進んだと言える。
(もちろん敗北していたら、時計自体が破壊されてしまっていたかもだが)

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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