株価高騰の今、大損しないために自分に言い聞かせたいケインズの名言

株式投資で利益を出すには、どのように投資銘柄を選ぶかが重要です。「株価指数」に連動する投資信託を買うという選択肢もありますが、投資をして株価が上がらないとつらいもの。

今、米大統領選挙が終わってから株価が大きく上昇していますが、全ての株価が上昇しているというわけでもありません。大きく上昇している銘柄がある一方で、大きく下落している銘柄もあるという状況です。

前回お話したように、自分が持っている株だけが上昇しないと悲しくなります。ウォール街での相場格言の一つで、ケインズという経済学者が述べた言葉に、「株式投資は美人投票のようなものだ」というものがあります。この意味と対処法を考えてみます。


大統領選後、買われた銘柄

今、まさに、美人投票が始まっています。好調だった米国のハイテク銘柄が、株価は大きく下落しています。

一つの大きな要因は、新型コロナウイスのワクチンが開発されたことだと言われていますが、米大統領選挙が終わって、4年前のような株高が期待されているのでしょう。

確かに4年前は株式の大きな上昇がみられましたが、米大統領選挙が直接の要因ではなく、きっかけに過ぎませんでした。大統領選挙が終わり、利上げが確実視され、そのために債券から株式への資金シフトが起きました。株式市場に大量に資金が流入し、大きな上昇となりました。

今回は、債券から株式へのシフトも幾分かありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、景気への影響が懸念されています。金利の上昇は限定され、債券から株式への資金シフトはそれほど期待できません。ある程度の金利上昇がみられたことで、業績に対して株価が高すぎる銘柄から割安銘柄に資金がシフトされているということです。

その流れとして、株価が高すぎるとされているハイテク銘柄が売られ、いわゆる景気に敏感に反応すると思われる銘柄が、景気が回復していないにもかかわらず買われています。こうした資金の流れも、誰が美人なのかという基準が変わったことで、美人コンテストで優勝する人(株価が上昇する銘柄)が決まるという例になります。

誰よりも先に美人を見つけることが大切?

美人投票は自分が美人だと思う人に投票をするものですが、必ず自分が選んだ人が美人コンテストで一番になるということはありません。株式投資も同じで、自分がいくら気に入っても、誰もが良いと思わないと株価は上がらないのです。

さらに言えば、自分が人より早く、安いうちにその株を買わなければなりません。皆が美人だと思う人にいち早く投資をしなければ、儲からないのです。

ただ、つい誰もが美人だと思っている人に投資をしてしまうもの。すでに皆が投資をした後だったということも多く、自分が一番高い値段で買ってしまうこともあります。

逆に、誰も美人だと思っていない場合には株価が安いのです。つまり、自分が安値で買うには、皆が美人ではないと思っている段階で買わなければならないという矛盾が生じるのです。

バフェットはなぜ日本の商社株を買ったのか

美人に例えると難しくなりますが、投資する企業の場合、「将来良くなるだろう」「将来美人になるだろう」という銘柄を見つけることが必要になります。

この夏、ウォーレンバフェットという著名な投資家が日本の商社株を買っていると話題になりましたが。彼は「良い会社が全く評価されないときに買う」のではなく、「悪い会社がかなり売られすぎたときに買う」ということでもなく、「良い会社がそこそこ安くなった時に買う」という手法です。

ですから、少し言葉は悪いかもしれませんが、投資先の企業は「誰もが認める美人なのだけれど、少し今は飽きられている」という企業に投資をするのが良いのではと思います。誰もがいいのはわかっている、美人なのはわかっているという場合には「安く買う」ということができず、「高いけど買ってみる」ということになり、リスクが高くなるからです。

一番の理想は、誰も気がつかない美人を見つけること。私のこれまでの投資で成功した例としては、誰も見向きもしなかったときのエスプール(2471)いう会社が大きく変化しているのにいち早く気づき、安値で買い、株価が10倍になりました。

ワークマン(7564)でもいち早く顧客層の変化に気が付いていたのですが、株価上昇の波に乗れずに買いそびれてしまいました。

安物買いの銭失いには気をつけよう

誰もが美人であることに気が付く前に買うのはいいのですが、美人なのだけれど、ずっと誰にも振り向かれない企業もあります。株式市場では「万年割安株」といわれます。業績や将来性から見て、どう考えても割安なのですが、安値に放置されているケースもあります。

そのうちに、業績が悪化して売られてしまうことも。将来を予想するのは難しいのですが、将来を織り込んでいたという理由でもなく、突然何らかの出来事が起こって業績が悪化したりします。

特に、現在のように新型コロナウイルスの影響で見込んでいた利益が上がらず、「新生活様式」でビジネスモデルが通用しなくなることもあるでしょう。こうした事態はプロの投資家でも直面するものです。

ソフトバンクグループの失敗

かのソフトバンクG(9984)は、大きな失敗をしています。米国の「ウィーワーク」というシェアオフィスの会社なども将来性があると見込んで投資をしたのですが、思ったほどに収益が拡大しませんでした。新型コロナウイルスの影響も懸念され、今では話題にも上りません。

一時期は毎日のようにニュースで報じられていたのに、寂しいものです。このように「美人だ、美人だ」ともてはやされていても、いつまでも長続きせず、時代の変化に置いていかれることもあります。

流行りの5GやAIに乗るべき?

株式市場での花形業種は、今は「5G」や「AI」ということになるのでしょう。しかし、かつての「インターネットバブル」や「糸へん景気」にみられるように、流行りに乗ることがいいとは限りません。

やはり、一番大切なのはお金の流れを見極めることです。皆がどこにお金を出すか、誰もが投資をしたくなる企業はどこなのかを探ることが重要だと思います。

さらに、何よりも気を付けなければならないのは変化です。美人の基準が変わる時があります。その時、いつまでも自分の好みに固執すると、大きな流れ、お金の流れの変化に取り残されてしまいます。

流行に乗らず、一方で流行に敏感に行動することが大切なのです。

© 株式会社マネーフォワード