抗ウイルス素材、新型コロナ流行で市場拡大。新たな需要で用途の広がりに期待

 下げ止まりとされていた新型コロナウイルスの感染は11月に入り予想されていたとおり増加傾向に転じている。本格的な冬に向け感染はますます広がると予想されるが、これまでにも増して一層の予防措置が必要だ。新型コロナ流行の出口が見えない現状で人々は様々な予防措置を工夫しているが、こうした動きの中で抗ウイルス素材製品の需要が急拡大しているようだ。

 6日、マーケティング業の富士経済が非医薬品系の抗ウイルス素材の国内市場を調査した結果レポート「With/Afterコロナ時代の到来で注目される抗ウイルス素材の最新情勢」を公表している。調査対象製品は無機系金属化合物抗ウイルス素材、光触媒、有機系抗ウイルス素材、抗ウイルス加工繊維の4分野とその応用・関連製品だ。

 レポートによれば、2020年の抗ウイルス素材の国内市場は19年比52.8%増の136億円と急拡大が見込まれている。さらに21年は19年比で2倍に近い172億円と予測され、今後この分野の市場はさらに拡大して行く見込みだ。

 分野別に見ると、無機系金属化合物抗ウイルス素材が60億円で19年比39.5%増に対し、有機系抗ウイルス素材は21億円で90.9%増とシェアは低いものの9割を超える急拡大となっている。19年までは衣料・寝装品での需要が大半を占めていたが、新型コロナ対策として生活空間での感染のリスク低減が重視され、抗ウイルス作用を有する機能素材やその応用・関連製品に注目が集まり需要が急増している模様だ。

 有機系抗ウイルス素材では、抗ウイルス作用を有する合成抗菌剤、第4級アンモニウム塩など界面活性剤、漆喰などの天然物系が展開されている。シェア大きい無機系金属化合物抗ウイルス素材は、従来から抗菌素材として広く採用されてきたが、新型コロナ流行以降、衛生用品ではマスクやフェイスシールド、スプレー剤、防護服などで、建材・インテリアでは床材、ドアノブや手すり、テーブル天板など、家電ではスマートフォンやタブレット画面の保護フィルムなどで需要が拡大している模様だ。さらに、不織布や樹脂、フィルム、紙、液体などへの加工が可能なため、印刷物用の抗ウイルス加工製品など新たな需要が創出される見込みもあり、今後さらに用途の広がりを見せ、需要は拡大傾向で推移すると期待される。(編集担当:久保田雄城)

士経済が抗ウイルス素材市場を調査。2020年の市場は新型コロナの影響で前年比52.8%増の大きな伸び

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