バッハ氏来日

 菅義偉首相とはグーでタッチ。小池百合子東京都知事とは満面の笑みで肘を「バンプ」させて再会を喜び合った。15日から来日中のトーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長▲新型コロナウイルスの感染が欧米でも日本でも再拡大するさなかの来日、東京大会の再延期や中止など“重大な発表”の可能性も一部でまことしやかにささやかれたが、この日の表情を見る限りは、ひとまず杞憂(きゆう)に終わりそうな気配▲菅首相は「人類がウイルスに打ち勝った証しとして、開催を実現する決意」を語った。バッハ氏も「大会を来年実行する決意を共有する。コロナ後の世界で人類の連帯と結束力を表すシンボルに」と応じた▲だが、来年の7月、首相やバッハ氏の言うような感覚を、果たして日本や世界は共有できているのだろうか。「ウイルスに打ち勝った証し」どころか、そのための道筋を一歩ずつ進んでいる感触さえ、今はなかなか持てない▲空気の乾燥でウイルスの活性が下がりにくくなるとされ、十分な換気にも寒さが厳しい試練の冬だ。そこを乗り切った先、遠来のアスリートを心から歓迎できる段階には、さらに幾つかステップが必要に思える▲政治や経済の思惑を離れて、何のため、誰のための五輪か-を問い直す時期も近づいてはいまいか。(智)

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