安全な凍結保存剤開発 金大研究チーム 卵子バンク応用期待

©株式会社北國新聞社

 細胞への悪影響を極力抑えた凍結保存剤を、金大の若手研究チームが開発し、17日までに英化学誌に発表した。現在は、シンナーの仲間である有機溶媒が使われているが、毒性がある有機溶媒ではなく、「イオン液体」に着目、高い安全性を確認した。凍結保存する卵子バンクでの応用をはじめ、水に溶けにくい薬の溶解剤としても活用でき、iPS細胞や抗がん剤の細胞実験が進展する可能性がある。

 金大の理工学域生命理工学系の黒田浩介准教授、がん進展制御研究所の平田英周准教授らが専門分野の垣根を越えて共同研究した。

 卵子バンクや臍帯血(さいたいけつ)バンクなどの凍結保存剤や、抗がん剤といった水に溶けにくい薬の溶解剤には現在、有機溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO)が広く使われている。その毒性は有機溶媒の中では低いとされるが、毒性は完全に無視できなかった。

 研究チームは、従来の有機溶媒ではなく、約50年前に発見された「イオン液体」で代替できないかと考えた。約80万種類あるイオン液体の中から、毒性の低い候補を10種類に絞り、実験細胞を使って毒性を検証、最適な1種類を探し当てるのに成功した。

 実験用の小型熱帯魚ゼブラフィッシュの受精卵からできる胚を凍結保存して毒性を見たところ、DMSOでは27匹中23匹が死に、4匹は奇形だった。新たに開発したイオン液体では27匹すべてが生存し、毒性が低いことが判明した。

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)では、さまざまな細胞に分化できる特長がDMSOでは失われるが、イオン液体では保たれた。抗がん剤シスプラチンの作用を調べる細胞実験では、DMSOを使うと効果が8割減となるが、イオン液体では損なわれなかった。

 研究チームは科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業の第1号に採択されており、黒田准教授は「21世紀の生命科学の革新につながる可能性を秘める」と強調した。