テンセント出資、最新鋭技術で不動産業界を変える中国テック企業の正体とは?

中国経済は2020年1~2月をボトムに投資主導で回復が続いています。固定資産投資は1~2月の24.5%減から1~9月には0.8%増へと小幅ながらもプラス圏に切り返しました。分野別には不動産開発投資が1~6月にプラスに転換した点は注目に値します。

今回は、「PropTech」(Property x Technology:不動産テック)として注目を集め、米NY市場に上場した「貝殻找房(BEKE)」を紹介します。


中国不動産市場はいち早く回復

不動産開発投資に関連して、中国の住宅市場はコロナ・ショックからいち早く回復しました。住宅販売面積は、ヒトの移動やヒトとの接触が厳格に抑制され大きく落ち込んだものの、3月に入ると回復傾向を強め、4月以降は前年の水準を上回るようになりました。

その理由として、(1)住宅購入層、特に複数の物件を所有する富裕層に対するコロナ・ショックの影響が相対的に小さかったこと、(2)中央政府は急速な価格上昇は避けたいが、地方政府の主要な財政収入の一つである土地使用権売却収入をしっかり確保するために、適度な価格上昇を期待していることなどが挙げられます。

PropTech(不動産テック)の台頭で新たな局面に

中国では不動産分野でのIT活用はこれまで上手くゆきませんでした。それは住宅という大きな資産を扱う不動産取引において、単純な情報マッチングするだけでは不十分だったことが失敗の原因だとみられています。

そうしたなか、業界の常識を打ち破るビジネスモデルと新たなテクノロジーを活用して現れた不動産テック企業が「貝殻找房(BEKE:KE Holdings)」で、その成長のキーワードとして、(1)物件のバーチャル化・データベース化、(2)テンセントなど異業種との提携、(3)海外展開の3点が挙げられます。

「貝殻找房(BEKE)」は中国のオンライン不動産取引プラットフォーム最大手で、VR内覧、3D内覧時のAIによる自動音声案内やCG家具の配置など最先端の技術を活用した全く新しい家探しの形を提案し、中国国内市場で物件探しの効率と質を飛躍的に高めました。

自宅に居ながら、見たい物件をバーチャルで内覧できるサービスで、ウィズコロナ時代にヒトとの接触を極力避け、感染リスクを低減する工夫なども凝らしています。

また、中国IT大手のテンセントが出資(第2株主)しており、テンセントの決済サービス「We Chat Pay(微信)」のメニュー画面には、同社へのリンクが設置されていることも、集客力アップにつながっています。さらに、いち早く不動産物件のデジタル化に乗り出し、20年6月末時点で約2.26億戸もの住宅を抱える巨大なデータベースを作り上げています。

加えて、これまで中国の不動産業界は典型的な内需依存型産業でしたが、同社は最先端技術を活用して海外展開も行っています。実際、20年6月に同社は日本の不動産テック総合ブランド「RENOSY(リノシー)」を運営する「GAテクノロジーズ」と提携しました。

米国市場に株式上場

同社は20年8月に米ニューヨーク市場に上場しました。上場初日に株価は公開価格(20ドル)を87.2%上回る37.44ドルに急騰しました。万科企業(2202.HK)など従来型の中国大手の不動産会社の株価が足元で伸び悩むなか、同社の株価は上場後も堅調に推移し、10月30日末時点に株価は69.75ドルまで上昇し、時価総額も800億ドルまで拡大しました。

近いうちに「貝殻找房(BEKE)」は中国不動産業界の「風雲児」から「リーディングカンパニー」になる可能性もあるので、今後も目が離せない存在になるとみています。

<文:市場情報部シニアマネージャー 佐藤一樹>

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