長崎県には、島が多い。
大は対馬、平戸島から、小は人家のない小島にいたるまで、およそ400の島が洋上に点在している。
五島列島の頭ガ島は、周囲約1キロの小島。人家は10軒あまりで、おそらく人の住める最低限の島だろう。
住民はみな、カトリック信者である。
その島の、貧しい家並みに囲まれて、石造りのどっしりした教会があった。
神父さんは鯛の浦から通ってくる。
こんな辺ぴなところに、よくもまあ石を運び、立派な教会を建てたものだ。信仰の力は不思議なものである。
「石で出来た教会は、日本ではここだけ、ということですタイ」― 島の人々は誇りに思っている。
伝馬船が着く砂浜のすぐ上は、墓地だ。
この島のどこにも、若者の姿は見いだせない。老人と子どもたちだけが、島を守って、寒空の下で生きている。
カトリックグラフ 1971年2月号より掲載 長崎県南松浦郡・頭ケ島天主堂