新型コロナウイルス対策に見るデータを用いた危機管理とは?

©株式会社マイナビ

世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大をきっかけに、自治体・政府におけるデジタル対応の遅れが指摘されています。新政府がデジタル庁の創設を提案するなど、日本においてもデータ整備・活用は喫緊の課題となっています。

危機の時こそ、データに基づく判断が必要

パンデミックが始まり半年以上が経ち、日本でも感染者数の増加が続き、人々はいまだ第2波のリスクにさらされています。前例のない医療と経済への影響に対処するため、世界中の国や地方自治体の政策立案者が苦心しているのは誰しも知るところです。

感染症の流行は過去にもあり、20世紀に入ってからもスペイン風邪、エイズ、SARSなどが起こっています。このような危機の時、多くの人々は政府からの情報と方針を頼みにし、待ち望んでいます。

2011年3月11日の東日本大震災の後、政府はその被害による電力の供給不足を補うため、電力各社に節電を要請し、大口需要家に使用制限を実施するなどの対応を取りました。家庭でも節電が試みられ、街灯や店頭の明かりも消されて、官民一体となって取り組みました。この結果、電力需要は前年比10%から20%減となり、計画停電の多くや供給力不足による停電は回避されました。

危機の時こそ、データという客観的で正確な情報に基づいた判断が求められます。その際、データをどのように分析して、意思決定に結びつけるかがカギとなります。関連性のあるタイムリーなデータを取得し、そこから貴重な洞察を引き出すことができることは、このような困難な時期に効果的な意思決定を行う上で役立ちます。

日本の公共機関におけるデータ分析の例

今年6月、厚生労働省がスマートフォン向けの新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」を発表しました。このアプリの狙いは、新型コロナウイルスの陽性者と接触した可能性を通知することで、感染の可能性がある人々に注意を促し、感染拡大を抑えることです。近々、ダウンロード件数は約1,000万件に達するといわれています。

現在、COVID-19への対応として、行政指導者は、通信データ以外にも山ほどのデータを解析して、行動の基礎となる洞察を獲得することに迫られています。感染者数、重症患者数、死亡者数、回復者数、検査実施の件数、入院者数、退院者数など考慮するべきデータの数に限りはありません。状況が急速に変化する中、ある時点で必要な情報を特定し、タイムリーに分析し、決定を下さなければならないという状況に、人々は何度も直面します。

昨年の台風15号は日本に甚大な被害を及ぼしました。千葉県では電気設備の浸水により、大規模停電が発生しました。その後、解消されたはずの地域の約600世帯で隠れ停電が発生していることが、家庭に設置された次世代型電力計「スマートメーター」のデータ分析で判明しました。政府は、スマートメーターのデータを分析して、被害の早期発見と避難呼び掛け、病院搬送に役立てていくことを目指しています。

このようにデータ分析は、政府や公共機関が、課題を発見して、それに対処することに役立ちます。危機の際には、より迅速な判断と行動が求められるため、データ分析が効果を発揮します。

危機におけるデータ分析の活用例

新型コロナウイルス感染症のような危機において、企業や政府が次々と発生する問題に迅速かつ効果的に対応する上で、データ分析ツールが役立ちます。

このようなツールは、既存のシステムを見直すことなく、新しいシナリオをサポートするために、組織の運用を適応させ、最適化するのに役立ちます。さらに、データ分析は、あらゆるチームで対応と改善の取り組みを調整するのに役立つだけでなく、従業員、市民、その他の利害関係者にリアルタイムで更新情報を提供し、それらを安全で十分にサポートし続けるのに役立ちます。

状況を改善するために、データ活用が有効となる主な領域に以下の3つがあります。以下にご紹介するのは海外政府の事例となりますが、日本の政府にとっても十分に参考になると思います。

(1)対策決定のためのデータ活用

世界中のあらゆる地域で医療崩壊の危機に直面している中、ニューヨークでは、COVID-19症例の数が急増するにつれて、病院は患者の受け入れ・治療能力を超え始めました。人命にかかわるため、公的機関は迅速に動く必要がありました。

そこでニューヨーク市は、緊急通報サービスから医療システムの能力、個人用防護具の供給、流通まで、急速に拡大する市のパンデミック対応業務の重要な要素を迅速に分析し、可視化しました。信頼できるデータにより、重大な活動を都市全体で調整、改善することで、より良い意思決定につながり、最終的に多くの命が救われました。

(2)政策評価 - インパクトを測定

カリフォルニア州保健福祉庁は、州と郡レベルでCOVID-19感染症の状況と、医療機関のシステム状況のデータを作成しました。これらのデータ分析表(ダッシュボード)を使って、重要な意思決定を行い、これらの決定の影響を追跡しました。外出禁止令の決定や、この外出禁止令が感染者の曲線を平らにするのに効果があったのか、などの重要な措置が含まれています。

実際、カリフォルニア州はCOVID-19の流行への対応に非常に積極的であり、ギャビン・ニューサム知事は州全体のロックダウンを出した最初の知事でした。加えて、同州はWebサイトにTableauのダッシュボードを埋め込み、一般の人々に、州内のCOVID-19感染状況と病院に与える影響について最新の情報を提供し続けました。公共のデータを使用して、ソーシャルディスタンスなどの効果的な方法を広めました。

外出禁止令の期間を測定する際、データにビジビリティを導入してわかりやすく表現することは、特に重要です。それは、カリフォルニア州が実施した効果からもわかります。表(ダッシュボード)は不可欠です。なぜな、ら人々がやり抜く動機となるからです。情報がなければ人々は自分たちがやっていることの効果を確認できません。

(3)情報共有のためにデータ分析で分かりやすいビジュアル

危機の時は、市民に安心感を与え、行政への信頼を高めるために、だれにでもわかりやすい形式で情報を共有することが重要性を増します。

例えば、イギリスのNational Health Service(NHS)は、英国政府のパンデミック対策と協力したり、国民の医療ニーズを支援したりするためにデータを使用しています。

また、ニューヨーク州保健省は、表(ダッシュボード)を利用して、ニューヨーカーに州のすべてのテスト、ケース、死亡率のデータを知らせています。これには、郡レベルの内訳と毎日のトレンド情報が含まれます。

災害やパンデミックのような時こそ、正確で最新のデータに基づいた情報を提供し、それを的確に分析解析した結果と共に施策を提唱することは、市民から信頼と安心を獲得することに寄与します。よりよい意思決定を迅速に行い、活動に反映することで、危機の影響を低減することができるのです。

著者プロフィール

佐藤 豊

2013年 Tableau Japan株式会社に入社。2018年より社長を務め、2020年4月より株式会社セールスフォース・ドットコムのTableau Softwareの日本における責任者としてカントリーマネージャーを務める。6年間のTableauにおける活動を通じて個人と企業組織の両方におけるデータリテラシー向上とデータカルチャーの定着に積極的に取り組む。