20万円の自宅に住んだ投資家が語る「“やってはいけない”指値と納得させる指値の違い」

中古マイホームを検討しているとき、仲介業者の提示価格をそのまま受け入れてませんか? 不動産に「定価」はありません。不動産投資歴10年、総家賃収入1億円超、総投資額12億円超で、20万円の自宅に住んでいた経験を持つ、個人投資家の広之内友輝が、サラリーマンでもできる中古住宅の値引き方法を前回に引き続き解説します。


やってはいけない指値の仕方とは?

不動産は相対取引です。私たちが不動産チラシなどでみる不動産価格というものは、あくまで売主の希望価格です。買主は、その物件に対して妥当と思う値段をつけていいのです。これを「指値(さしね)」といいます。指値こそ、安い不動産を作り出す王道です。

サラリーマンなど不動産投資家でない方は、「この家を大変気に入ったのですが、値段が折り合わなくて…」と断念される方が多くいます。でも、この考え方は根本的に間違っています。不動産は、買主も希望価格を提示してよいからです。

しかし、逆に根拠もなく指値をして、仲介会社を困らせてしまったり、売主を怒らせてしまったりしてはいけません。

まず、交渉の前提ですが、指値をする際は、必ず仲介業者に相談すべきです。「〇〇万円の値引きをしてほしいのですが、通るでしょうか。」などといえば、問題ありません。その際大切なのは、あなたが指値(値引き)をする根拠を明確にすることです。

仲介業者が嫌がるのは、根拠なく安くしようとする態度です。実は、不動産業者が売り物件を預かることは、大変なことなのです。

例えば、「自分の持っている不動産の値段はいくらになるのだろう」と興味半分に不動産価格査定サイトに入力したところ、不動産業者から電話営業が数十件も鳴ってビックリした経験のある方はいませんか? 売り物件を預かれるのは、一般的にたった1社。1物件に何十社が群がるように、「自分に売らせてもらえないか」と訴えてくるものなのです。

競争を勝ち抜いて預かれた売り物件は、不動産業者にとっては飯のタネになる宝物。このような状況ですので、売主に、不動産業者はひどく気を遣います。その売主の利益を削ることになる値引き交渉を行うのですから、業者は大変です。

売主のご機嫌を損ねて「あなたのとこに売ってもらうの、やめた」などと言われようものなら、上司には怒られ、自分のコミッションはフイになり(不動産業者は月収が安く、手数料で稼がないといけない)、凍り付く思いです。

最強の指値法は、現金値引き

よって、基本的に指値を業者は嫌がります。その業者を動かすためには、業者が納得する指値のポイントが必要なのです。では、どのように指値をすればよいのでしょうか。あなたも、売主も、仲介業者も納得の3つの指値交渉術をお伝えします。

(1)現金による値引き
第1に、最強の指値の武器は、前回の記事でも書いた「現金値引き」です。これは一般には不動産価格を3割引きさせる威力があります。1000万円の中古物件なら、300万円の値引きが通ってもおかしくありません。

(2)劣化指摘による値引き
ただし、これはキャッシュがある方に限られるでしょう。キャッシュに余裕がないときは、どうしたらよいか? 第2に、「損傷個所を明確にして、修繕費がかかる」という理由で交渉をすることです。

ただし、「〇〇も▲▲も壊れているので安くして」などと、上の立場から指値をしてはいけません。あくまでお願いベースで「物件を大切にしたいので、ここを直す費用をおまけしてもらえないか」という態度で接するべきです。

100万円程度の大幅値引きが可能な修繕箇所は「屋根」「壁」の劣化です。屋根は、2階の窓やベランダから状態の確認が可能ですが、地上からでも「軒先」の状態などで確認可能です。

屋根がトタンである場合は、塗料につやがないなどの状態が確認できれば、塗料が劣化しているサインです。瓦の場合は、ずれや割れなどの状態があれば指摘して、根拠をもって価格交渉しましょう。

壁は、触ってみて白い粉状になった塗料が手についてしまうようなら、塗装が必要です(チョーキング現象)。また、ペットボトルの水を壁にかけてはじかないようであれば、塗料が劣化している証拠。そして、壁と壁をつなぐ「コーキング」にヒビなどが入っていないか確認します。ひびが入っていなくても、硬化しているようであれば、一定劣化していますので価格交渉材料になります。

「屋根が一部さびている」、「壁が浮いてきている」などのひどい状況であれば、専門業者を呼んで、見積もりを取って、価格交渉に挑戦してみましょう。

もっとも簡単な指値法とは?

(3)端数による値引き
ただし、これも奥ゆかしいサラリーマンの方には、ハードルが高く感じるかもしれません。第3にどんな人でもできる、簡単な指値術を伝授しましょう。

それは「端数切り」です。例えば、2480万円の物件は80万円引きにする、といった具合です。業者も最近では指値が入ることをわかっているので、あらかじめ売主から、「端数切り」の了解をもらっていることもあります。何千万円の取引ですので、売主も「端数くらいはいいか」と思う場合が、多いものです。

以上、3つのポイントを解説しました。いずれにせよ指値は、売主側の事情が重要となってきます。不動産は取引で価格が決まるため、売主側の事情によっては、3割引きどころか、さらなる値引きが可能になることもあります。定価のある小売り店で買い物をするつもりで、中古不動産を買うのは止めましょう。

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