舞台芸術で赤ちゃんの好奇心刺激 「ベイビーシアター」感受性高め創造性育む

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乳幼児対象のベイビーシアター「KUUKI」の公演で、舞台に登場した風船に触れる子ども=熊本市北区
乳幼児対象のベイビーシアター「KUUKI」の公演で、舞台に入り遊ぶ子どもたち

 0歳から1歳半までの乳幼児を対象にした舞台芸術「ベイビーシアター」が注目されている。赤ちゃんの好奇心を刺激するように工夫されたオリジナル作品の公演が数年前に始まり、県内でも10月、熊本市中央区の市男女共同参画センターはあもにいで初上演された。ダンスや音楽を組み合わせたパフォーマンスを見せることで感受性を高め、創造性を育む効果があるという。

 ベイビーシアターは、1980年代にヨーロッパで始まった。ストーリーのある芝居を見せるのではなく、音や照明、演者の体の動きなどを駆使して赤ちゃんの五感に働き掛ける。子どものための舞台芸術を専門に行う日本児童・青少年演劇劇団協同組合(児演協)が2015年にベイビーシアターの専門プロジェクトを発足。全国で公演を重ねている。

 熊本公演は県子ども劇場連絡会との共催。親子10組が鑑賞した。上演作「KUUKI(くうき)」は、児演協がポーランドから演出家のアリツィア・ルブツァックさんと舞台美術のバーバラ・マレッカさんを招いて制作したオリジナル作品。30分の鑑賞パートと15分の参加パートで構成される。

 舞台と客席の間に幕や段差はなく、観客は薄暗い会場に入った瞬間にゆったりとした空気に包まれる。パフォーマーの2人がアコーディオンの生演奏に合わせ、1枚の大きな布をゆらゆらと動かしたり、広げたり。最初はよそ見をしていた赤ちゃんたちも次第に布の動きにくぎ付けになり、母親の腕から身を乗り出す子もいれば、手をたたいて喜ぶ子もいた。

 後半の参加パートでは、砂が入ってジャラジャラと音が鳴る玉や光る玉、風船などを持ったパフォーマーが登場。親子に少しずつ近づいていくと、赤ちゃんは玉に手を触れたり、頭上を漂う風船にじっと見入ったりして楽しんだ。計45分の公演中、誰も泣いたり、ぐずったりすることはなかった。

 熊本市の林史絵さん(33)は、11カ月の長男律ちゃんを連れて観劇。律ちゃんは鑑賞パートの最中、夢中になるあまり何度もハイハイしてパフォーマーに近寄っていった。通常の舞台では注意されそうなハプニングも、ベイビーシアターでは大歓迎だ。史絵さんは「子どももこんなに楽しめるんだと驚いた。成長を実感できた」と感心していた。

 ベイビーシアターを担当する児演協理事の太田昭さん(48)=東京都=は、「赤ちゃんが気持ち良く、幸せに過ごせる空間を提供できるよう心掛けている」と言う。

 「赤ちゃんに芸術は分からないと思う人もいるかもしれませんが、表情に注目すると関心を示していることがよく分かる」と太田さん。「音に反応するのか動く物に興味があるのか、それぞれの個性が見える。親が子どもの新たな一面を発見できる機会でもあります」 (平澤碧惟)