三菱電機オーロラビジョン40周年 長崎から世界へ なお進化 スポーツやエンタメ盛り上げ

入社以来オーロラビジョン開発に関わってきた原さん。手前はブラウン管の初期モデル、右はさらに小型化し解像度を上げた第2世代モデル、左はLEDを採用した第3世代モデル=時津町浜田郷、三菱電機長崎製作所

 三菱電機が世界初の屋外型フルカラー大型映像装置として「オーロラビジョン」(海外名ダイヤモンドビジョン)を世に送り出して40周年。長崎製作所(西彼時津町)が一貫して造り、世界中のスポーツやエンターテインメントの空間を盛り上げてきた。その技術は今なお進化し続けている。
 初号機は1980(昭和55)年、米大リーグのロサンゼルス・ドジャースの球場に納入。7月の全米オールスターゲームで華々しい“デビュー戦”を飾った。
 それまで電光掲示板の主流は白熱電球を並べた単色。ネオンサインも昼間は見えない欠点があった。
 当時、長崎製作所はオイルショックで船舶用機器事業が振るわず、新分野進出を模索していた。商談を受け、長崎の技術者が着目したのはテレビのブラウン管。直径28ミリに小型化して平面に多数敷き詰めた。日光を遮るひさしを付けたり、ブラウン管に着色し反射を抑えたりして、屋外でも鮮明なカラー画像を実現。白熱電球と比べ消費電力を約10分の1に抑え、寿命は数倍になった。
 初号機の価格は6億円以上と「今の20倍程度」(関係者)。それでも、好プレー再生やアニメなどコンテンツが受け、テレビ普及で遠ざかった観客を呼び戻した。ドジャースは翌年のワールドシリーズで16年ぶりに優勝し、集客効果を評価した他球団も追随。82年のサッカー・ワールドカップ(W杯)スペイン大会でさらに浸透した。
 「先輩方が画期的な技術で新たな市場を開拓した」。そう語る長崎製作所勤務の原善一郎さん(64)も81年の入社から開発に携わり、解像度アップなど改良を重ねた。当初は画面から50メートル以上離れなければ見えなかったが、今では2~3メートル先で可能に。一昨年、社会や産業の発展に長年貢献した技術革新を表彰する米国電気電子学会(IEEE)主催「マイルストーン」に認定された。富士山レーダーや東海道新幹線などに続く国内34件目、九州では初の選出となった。
 90年代に青色発光ダイオード(LED)が登場後、解像度では他社との差別化が難しくなった。三菱電機は自然な色合いや、黒を強調したコントラストを生むコントローラーで優位性をアピール。プロ野球9球団をはじめ、20カ国以上に2千面以上を納めた。
 近年、中韓メーカーが台頭し、海外市場や屋内向けは価格面で苦戦。一方、国内市場は新型コロナウイルスの流行で設備更新需要が先送りされているが、競馬場やアリーナなどもより派手な演出が求められている。
 三菱電機は大型スクリーンにとどまらず、スタジアム内の通路や飲食店でも複数の画面やデジタルサイネージ(電子看板)と連動させ、映像と音響を駆使したトータルシステムで「アミューズメントパーク化」を提案している。今後も、壁面など設置可能先を増やせるよう軽量化やコストダウンを進める。
 長崎製作所施設システム部の武田和幸部長は「オーロラビジョンは長崎で生まれ育ち、技術者の魂がこもった、わが社の誇り。自信を持って世界に供給していく」と話した。

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