夫と死別し天涯孤独になった50代女性、老後に向けて決めておくことは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、57歳、会社員の女性。夫と死別して天涯孤独になってしまった相談者。老後マネープランは大丈夫?決めておくべきことは? FPの飯田道子氏がお答えします。

夫が亡くなり天涯孤独になりました。老後に向けての生活設計を教えてほしい。

【相談者プロフィール】・女性、57歳、会社員、夫と死別

・子ども:なし

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:16万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:40万円

・毎月の世帯の支出の目安:13万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:6万3,000円

・食費:3万円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:5,000円

・通信費:1万5,000円

・車両費:5,000円

・お小遣い:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:10万円

・現在の貯蓄総額:1,800万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円


飯田:夫が亡くなり、天涯孤独となってしまったという相談者様。老後に向けての生活設計を教えてほしいとのご相談です。相談者様の場合、どのようなことに心がけて設計するべきか、何に注意すべきかについて、考えてみたいと思います。

どのようなセカンドライフを望むのかを考えてみましょう

老後に向けての生活設計というと、どうしてもお金のことが一番に思い浮かんでしまいがちです。しかしながら、優先すべきことは、自分がどのようなセカンドライフを送りたいのかを考えることです。

【具体的に考えて欲しいこと】

・何歳まで働くのか(65歳で定年、雇用延長で65歳、独立する等もあり)
・どこで暮らすのか(引っ越しするのか、賃貸で住み替え、購入するのか)
・どのような生活を送りたいのか(趣味活動、友達付き合いなど)
・どのような資産を残すのか、残さないのか
・万一のときに頼りにできる人は誰か

これら、5つのポイントを考えておくことが大切です。

老後のマネー設計はどうする?

老後を考えた場合、もっとも気になるのがお金のことだと思います。相談者様のデータには将来受け取るであろう、年金額について記載がありませんので、一般的な数値を利用して考えてみます。

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年度)」のデータによると、女性の厚生年金の平均年金月額は10万2558円ということが分かりました。現在の毎月の支出額の目安は13万円ですので、毎月約3万円、年間36万円が不足する計算となります。

たとえば、相談者様が65歳までの8年間働いたとすると、毎月の貯蓄額3万円ですので年間36万円。8年間では288万円。ボーナスの貯蓄額は毎年10万円ですので、8年間で80万円貯蓄できる計算です。

これらのデータを踏まえて、65歳時点でいくら貯まっているかというと、現在の貯蓄額1800万円+毎月の貯蓄額288万円+ボーナス貯蓄額80万円=2168万円となります。

退職後に現状と同じような生活を続ける場合には、年間36万円を切り崩していくことになります。たとえば100歳まで元気で暮らしていた場合では、貯蓄切り崩し額は、36万円×35年ですので、1260万円となります。

順調に貯蓄ができていれば、1260万円を差し引いても908万円の資金が残ることになります。何にどのように使うのか、退職のタイミングはいつにするのか、じっくり考えてみてはいかがでしょうか?

将来を託す人は誰かを考えておく

現在、一人での生活となっている相談者様。老後の設計として、病気になったときや、万一のことが起こってしまったときには、どのように対処するのか、考えてみてください。

たとえば病気なってしまったときや介護が必要になったときには、誰が保証人になってくれるのか、考えていますか。すでに決まっているのなら安心ですが、まだ決まっていないのなら、基本的に自分よりも若い人に保証人になってもらえるよう、頼んでおきましょう。

一般的に兄弟姉妹がいる場合には、自分より年下の弟や妹が候補に。その他には、甥や姪なども将来を託す候補になると思います。基本的に保証人になってくれる人は、万一のときにもメインとなっていろいろなことを進めてくれる人だと思います。相続なども踏まえて、誰にお願いするのかを考えてみましょう。

もちろん、血縁以外からお願いすることもできますが、相続と切り離すことは難しいため、第三者に託す場合には、どこまで託すのかを明確にしておくことも必要です。たとえば、将来、認知症が不安であれば、任意後見制度を利用するのも手ですし、遺言書を作成しておき、全ての手続きを弁護士などにお願いするというのも方法のひとつになります。

エンディングノートを書いて整理する

一人での生活は、何かと不安なこともあるかと思います。お金のこと、将来のことなど、どうすれば良いのかと悩んでしまうこともあるかもしれなせん。まずは、エンディングノートなどを使って、どのような生活を望むのか、将来に対して望むことは何かを考えてみてはいかがでしょうか? 書き出すことで、自分の思いを改めて見つめることができますし、文字にすることで、自分の本当に望むことも見えてくるかもしれません。

人生はまだまだ続きます。相談者様らしい素敵なセカンドライフが送れるよう、陰ながらお祈りしています。

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