東京03が表現する“負け犬”精神の面白さ──じわじわくる実写&アニメの革新的コント番組【激推し!“爆笑サンデー”<第5回>】

2020年秋、BSフジの日曜が変わる──。「BSフジ爆笑サンデー」と題した新枠では、午後10:00~深夜0:30にわたり、日本のお笑い界を牽引する人気芸人たちを迎えた“色とりどりのバラエティー5番組”が集結。休日が終わる、ちょっぴり憂鬱な夜をポジティブに彩っていく。TVガイドwebでは、そんな「BSフジ爆笑サンデー」に参戦する出演者たちに独占インタビューを敢行し、全5回の連載でお届け!

ラストとなる第5回は、「東京03 in UNDERDOGS-今日は負けたけど、明日は絶対勝つ-」でメインを務める東京03(飯塚悟志、豊本明長、角田晃広)の3人。“負け犬”にフィーチャーしたさまざまなエピソードを実写&アニメなどで紹介する革新的コント番組とは、どんな内容なのか? いかにして生まれたのか? おしゃれで実験的なコント番組の魅力を聞いた。

──「東京03 in UNDERDOGS-今日は負けたけど、明日は絶対勝つ-」のスタートから5カ月あまり。周りの評判はいかがですか?

飯塚 「周りからの声は…全く、ないですね!(笑)。でも、最近ちょっとずつではありますけど、いろんな現場で声をかけていただくようにはなってきて…。あ、でも、岡野(陽一)! アイツ、別の番組で会った時に、その話一切しないの! 一緒に同じ番組をやってる仲間なのに」

角田 「あはははは! 準レギュラーくらい出てるのにね」

豊本 「本人も何の番組に出てるのか知らないのかもよ?(笑)。それぞれのコーナーを別々に撮ってるから」

飯塚 「言っても不思議な番組じゃないですか。30分の尺に、たくさんコーナーが詰め込まれていて。東京03の名前を冠した番組ではあるんだけど、われわれ自身はほとんど番組に出ていないという(笑)」

──基本的には映像やアニメ、イラストなどで各コーナーが構成され、登場人物が出てくるコーナーでは岩崎う大さん(かもめんたる)や岡野さん、森本晋太郎さん(トンツカタン)ら後輩の芸人さんが出演されています。

飯塚 「われわれは『SHOUT OF UNDERDOG RADIO』というコーナーでおしゃべりするのがメインで。3人がアニメで描かれた犬のキャラクターになって、ラジオのディスクジョッキー風にしゃべるんですけど」

豊本 「あとは僕がナレーションをやってる昔話のコーナー(昔話に出てくる悪者など、負けた側の人のその後のストーリーを紙芝居風に紹介する『昔ばなしのその後…』)とか」

角田 「最近は僕がアコースティックギターで歌うコーナー(負け犬シンガー・暗犬敏郎が、どんな幸せなエピソードも“負けっぽく”歌う『負け犬シンガー』)なんかも始まって。ちょっとずつ顔出しも増えてますね」

──「SHOUT OF UNDERDOG RADIO」でお三方をキャラクター化した犬塚、犬本、犬田の印象は?

角田 「3人それぞれの特徴を捉えていただいて。表情もちゃんと僕らに見えるんです」

豊本 「アメコミ風でかわいいからグッズとか作ってくれたらいいのにな~と思いますね」

飯塚 「ゆくゆくはアニメの声優さんのお話でも来ればな…と願ってますが、絶対来ないでしょうね~(笑)。普通にラジオでしゃべってるのと同じだから」

──どのコーナーもおしゃれで面白くて、なおかつ実験的で。1980年代の終わりから90年代にフジテレビが生み出した深夜番組の匂いを感じさせますね。

豊本 「(思い出して)あ~、確かに」

角田 「なんか、分かる。分かります。懐かしくて新しい感じ」

飯塚 「そもそもは、われわれ東京03との付き合いも長い作家のオークラが“いろんな実験的な企画を試したい”というところから番組がスタートしまして。とはいえ、想像以上に実験的なコーナーをやってるな~という印象なんですけど(笑)。例えば、最近だと世界的ダンスパフォーマンスグループのs**t kingz(シットキングス)さんが踊るコーナー(『負けても踊れりゃそれは勝ち』)とか。“どんなに負けてる状況でも踊れたら勝ち”っていう。あれは面白かったし、ダンスにも感激したな~」

角田 「面白かったね~。ほかにもオンエアで見て“面白いな~”と思うコーナーがたくさんあって」

豊本 「収録では自分たちのコーナーのところしかやらないので、オンエアまで全然内容が分からないんですよ。さっきの昔話のコーナーでも、絵が完成しないまま声だけ録って。全体の仕上がりは毎回、オンエアで確認しています(笑)」

飯塚 「だからs**t kingzさんもそうだし、(ジャージでコンビニに行く途中ゾンビになった女性がイケメンと出会って…というコント『ゾンビに恋は難しい』で)ゾンビ役をやってる女優さん(池上紗理依など)にもお会いしたいんですよ~。1回も会ったことがないから、いつかスペシャル版とかやってね。出演者みんなで会いたい。お互い“はじめまして~”なんて(笑)」

──初回のオンエアで、角田さんが「歌が好きだから、負けた犬の遠吠え系の歌が歌いたい」とおっしゃっていたら、それが後々「負け犬シンガー」として新コーナーになったり。どんどん変化していく感じもワクワクします。

角田 「そうなんですよ。僕の希望通りのコーナーを作っていただいて。なんか言えばかなっちゃう、みたいな。いい意味でゆる~い雰囲気はありますね(笑)」

豊本 「フットワークが軽いよね」

飯塚 「僕もずっとコントっぽいことをやりたいな~って言ってたら、かもめんたるの岩崎う大くんが台本を書いてくれたコーナー(世にも奇妙な感じで負けた男を描いたコント『STRANGE UNDERDOG STORY』)は、わざわざ小さな劇場を借りて撮影して。う大くん率いる劇団かもめんたるの女優さん(もりももこ)もすごく達者な方だったので、やっていて楽しかったですね」

──豊本さん、何かご希望は?

豊本 「僕は自分から“何かをやりたい”ということがないので…(笑)」

飯塚 「(笑)。でも豊本は、こう見えてダンスがうまいんですよ。だからs**t kingzさんのコーナーに交ざればいいのにな~と思いますけど」

豊本 「(笑)。確かにダントツでうまいけど、“この3人の中では!”って話だから」

飯塚 「いいの、いいの。そこに交ざっての豊本の“負けぶり”が見たいだけだから(笑)」

──“負け犬”って聞きようによってはネガティブな印象を持たれがちですが、「SHOUT OF UNDERDOG RADIO」をはじめ、マイナスをプラスの笑いに転化させる技は、さすが東京03だなと感心します。

飯塚 「いえいえ。そもそもわれわれのネタ自体がそうなので。そういう負けてる人間を主人公にしたコントをやっているので、なんか通じるものがあるんですよね。視聴者の手紙もちょっと悲しかったり、みじめなエピソードを笑いにする感覚が同じというか。どう見ても負けてるんだけど、それを認めず『これって勝ちですよね?』って言い張ってるものが多いんですよ(笑)」

角田 「(笑)。あらがってる手紙ばっかりで。それを僕らが“勝ち”か“負け”か判断して」

飯塚 「あらがえばあらがうほど“負け感”は強くなるんだけど(笑)、そこがまた面白いよね」

角田 「手紙で主張してることが、僕がコントでよくやるキャラクターに似てるっていう」

飯塚 「コントのキャラ、イコール角ちゃんだから。このコーナーをやりながら角ちゃんの同じような負けエピソードがどんどん浮かんできて。本当は設定にある“犬田さん”って呼ばなきゃいけないところ、つい『角田さんは…』って言っちゃうんだよね~(笑)」

角田 「そうやって笑ってもらえるのはうれしいですけど、ちょっと複雑な気持ちですよね(笑)」

──そんな角田さんの、最新の負けエピソードはありますか?

飯塚 「角ちゃん…というより東京03が負けた話なんですけど、5月に単独ライブをやったんですよ(東京03リモート単独公演『隔たってるね。』)。しかも、初の生配信で。で、生配信がミュージシャンの間でも主流だし、コロナ禍で中止になった全国ツアーの赤字をなんとか埋めようと思ったんですけど…」

角田 「結構、期待していたんですけど、全然! 見てもらえなかったです(笑)。ミュージシャンの皆さんが10万人とか聞いていたので、せめて1万人くらい…と思っていたら全然、でした(しょんぼり)。おこがましかったな~、身の丈に合わないことをしたな~と反省してます」

豊本 「(笑)。ずいぶんリアルな負け話だね」

角田 「リアルで悲しすぎるから(笑)、僕のポップな負け話をすると、新しい育毛剤が出たってことで使い続けているんですけど、3カ月くらい経たないと効果が出ないと」

飯塚 「お~、ポップだね」

角田 「でね、購入するたびにメールが来るんですよ。『効果が出ないと心配ではありませんか?』とかいろいろ。それで今、半年くらい経ったんですけど、ちょっと感じてないというか。ぶっちゃけ生えていないというか(笑)。“あれ…これ負けてる…?”“でも人によって効果が違うだけかな?”って」

豊本 「ハハハハハ!」

角田 「今、勝ちと負けの瀬戸際なんで。もう少し使ったら手紙を書いて『SHOUT OF UNDERDOG RADIO』のコーナーで判断してもらいたいです(笑)」

豊本 「そんなの送られても、われわれからは何も言えないよ~」

飯塚 「そう、自分との闘いだからね。好きにしてくれたらいい」

飯塚 「ちょっと、突き放すのやめてくれよ~(笑)」

──10月からは「爆笑サンデー」枠が新設され、中川家さんの「中川家&コント」(午後10:00)を皮切りに、5番組が並ぶ2時間半の大型バラエティー枠となりました。これをきっかけに初めて「東京03 in UNDERDOGS-今日は負けたけど、明日は絶対勝つ-」を見る視聴者もいると思いますが、どんな番組なのか、楽しむためのトリセツはありますでしょうか?

飯塚 「どんな番組なのか、一言で説明できないところがこの番組の面白さだと思うんですよ。でも、一貫して“負け”がテーマになってるので。いろんな負けの見せ方を、創意工夫して試行錯誤して見せてるところが、一つの面白さだよね?」

角田 「で、気付いたら終わってる。もう12時半だ、おやすみなさーいくらいの感じで見ていただければちょうどいいと思います」

飯塚 「『爆笑サンデー』5番組のうちの最後に放送される番組だから、布団に入って寝る準備を整えて、楽~な状態で見ていただければ」

角田 「ワンコーナーが短いから寝落ちしちゃっても全然、平気です(笑)」

飯塚 「とはいえね、どのコーナーも面白いから。見てるうちに好きなコーナーを見つけていただいて。東京03にとらわれず出演している芸人さん、俳優さんで好きな人を見つけたり、自分なりの楽しみ方を見つけてもらえたらいいな~と」

角田 「これ別に好きじゃないな…と思っても、ずーっとそれじゃないから。いろんなコーナーがあるし、いろんな人が出てるし。新しいコーナーもどんどん登場しますし」

飯塚 「(笑)。ホント、角ちゃんって昔からその発想だよね? 最初っから負けるの前提でいるよね? 例えばDVD発売の宣伝とかで取材受ける時も、できるだけハードルを上げたくないっていう。すぐ『そんなに面白くないですよ』とか言うんですよ~、この人」

角田 「アハハハハ!」

飯塚 「ともあれ、舞台があって、セットがあって、演者がいて…という、いわゆるコント番組ではないですけど、東京03らしさは出てる番組だと思います。日曜の夜に見て、クスクス笑っていただいて。明日も頑張ろうと思っていただければうれしいです。せひ、ご覧ください」

【プロフィール】

東京03(とうきょうぜろさん)
飯塚悟志(いいづか さとし/中央) 1973年5月27日生まれ。千葉県出身。
豊本明長(とよもと あきなが/右) 1975年6月6日生まれ。愛知県出身。
角田晃広(かくた あきひろ/左) 1973年12月13日生まれ。東京都出身。
1995年に飯塚と豊本が、アルファルファを結成。2003年にプラスドライバーを解散した角田が加入し、東京03を結成する。09年には「キングオブコント2009」で優勝し、人気を不動のものに。毎年全国ツアーを開催し、19年8~12月に全国15カ所43公演で開催された全国ツアー「人間味風」では3万人を動員。「今もっともチケットが取れない芸人」と言われている。

【番組情報】

「東京03 in UNDERDOGS-今日は負けたけど、明日は絶対勝つ-」
BSフジ
日曜 深夜0:00~0:30

取材・文/橋本達典 撮影/蓮尾美智子

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