物議を醸した「野手登板」 投手が投げた時との“差”をMLB公式サイトが検証

ドジャース時代に4試合登板したラッセル・マーティン【写真:Getty Images】

MLB公式サイトが2008年以降の野手登板のデータを検証

今季、日本で球界を騒がせた出来事の1つといえば、巨人の原辰徳監督が繰り出した“野手登板”の一手だろう。8月6日に行われた甲子園での阪神戦。8回1死からマウンドに上がったのは野手の増田大だった。この原監督の策には賛否が巻き起こることになった。

海の向こうのメジャーリーグでは、今では大差がついた試合での野手登板は見慣れた光景となっている。MLB公式サイトでは、この野手の登板に関する特集記事を掲載。MLBでも2005年には1試合しかなく、2013年でも14試合しかなかった野手の登板だが、昨季は90回もの野手登板があった。

では、果たして野手登板にはどこまでの効果があるのか。投手が投げている際と比較して、どれだけ打たれやすいのだろうか。このMLB公式サイトの記事で検証が行われている。

記事によると、2008年以降に野手が登板した際、対戦した打者の成績は打率.321、出塁率.399、長打率.630だったという。当然、投手が登板した時に比べれば、野手が登板した際の打たれる確率は高くなる。ただ、2019年から2020年のネルソン・クルーズ(ツインズ)が同程度の成績で「野手登板は対戦打者全員がネルソン・クルーズになるようなものである」と例えている。

当然投手が投げた時よりも打たれるが、それほど「悪くない」とも

この結果に対してMLB公式サイトは「これは想像していたよりも悪くない。ネルソン・クルーズは人間の選手であり、私たちはビデオゲームのようなあり得ない成績になるかと思っていた」とする。

また、野手が登板した際のスイング数あたりのホームラン率4.1%(投手は1.6%)、スイング数あたりの空振り率11%(投手は22.7%)、ハードヒット率39.5%(投手は34.5%)などの数値を出し「当然ながら投手のほうがいい成績だが、思ったほど悪くはない」と言及した。

2019年にドジャースで4試合に登板したラッセル・マーティンは2安打無失点に封じ、2つの三振を奪っている。また、ヤンキースのエリック・クラッツは捕手は今季2試合に登板。2本塁打を打たれているものの、“魔球”ナックルボールを投じてファンを沸かせた。

大差がついたワンサイドゲームで繰り出される「野手登板」だが、数字上は驚くほど投手が投げた際と差が出るわけではないよう。日本で物議を醸した「野手登板」だが、これも1つのエンターテインメントだとすれば、また1つの野球の楽しみだと言えるのではないだろうか。(Full-Count編集部)

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