MotoGP:スズキとジョアン・ミルが達成した数々の記録。最終戦でコンストラクターズタイトル獲得なるか

 ロードレース世界選手権のMotoGPクラスに参戦しているスズキのファクトリーチームであるチーム・スズキ・エクスターは、所属するジョアン・ミルが第14戦バレンシアGPで7位に入り、ランキング2位と大きな差をつけて171ポイントに到達したことから最終戦ポルトガルGPを残して2020年シーズンのチャンピオンを獲得した。また、スズキとしてライダーふたりで309ポイントを稼ぎチームチャンピオンも獲得。そのほかスズキの歴史に残る記録が多くうまれたため紹介する。

 1974年に500ccクラスの参戦を開始したスズキは、2000年までに5度のチャンピオンを獲得。近年では2002年にMotoGPクラスが500ccから990cc(現在は1000cc)へとレギュレーションが変更されたタイミングで、V型4気筒エンジンのスズキGSV-Rを投入しMotoGPを戦ってきたが、2011年末にMotoGPの参戦を一時休止した。

 そして2015年から新たに開発した並列4気筒エンジンを搭載したGSX-RRを使用してグランプリを戦っており、新たなチャレンジに挑んでいる。2020年は節目の年であり、MotoGPマシンであるGSX-RRのカラーリングはマン島で開催されたツーリスト・トロフィーに初参戦した1960年からレース参戦60周年を記念したものになっている。さらに、スズキは2020年3月15日に創立100周年を迎えており、そのロゴをカウルに掲げて参戦している。

チーム・スズキ・エクスターの2020年型GSX-RR

 2020年シーズンにおけるスズキの活躍を振り返ると、第5戦オーストリアGPでジョアン・ミルが2位に入り最高峰クラスでキャリア初表彰台を獲得すると、第7戦サンマリノGP、第8戦エミリア・ロマーニャGPでも表彰台に上った。

 そして第9戦カタルーニャGPでミルが2位、アレックス・リンスが3位表彰台を獲得して、スズキにとっては2007年の第13戦サンマリノGPでクリス・バーミューレンとジョン・ホプキンスが2位と3位でフィニッシュして以来、13年ぶりのダブル表彰台となった。

 さらに第11戦アラゴンGPではリンスが今季初優勝。ミルは3位に入り2000年にチャンピオンに輝いたレジェンドライダー、ケニー・ロバーツ・ジュニア以来、20年ぶりにポイントリーダーに躍り出る。また、リンスとミルの活躍により、チームランキングでもトップとなった。

2020年MotoGP第13戦ヨーロッパGPでジョアン・ミルとアレックス・リンスがワン・ツーフィニッシュ

 続く第12戦テルエルGPでもダブル表彰台を獲得したスズキは、第13戦ヨーロッパGPでミルが初優勝してリンスとともにワン・ツー・フィニッシュ。当時は表彰台のトップ3がスズキだったが、1982年最終戦西ドイツGPで、ランディ・マモラとバージニオ・フェラーリが達成して以来、スズキにとって最高峰クラス38年ぶりのワン・ツー・フィニッシュという快挙も成し遂げた。

2020年MotoGP第14戦バレンシアGP ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)

 第14戦バレンシアGPではリンスが4位、ミルが7位と表彰台に上ることはなかったが、ポイントを着実に稼いでいたためミルが2020年のMotoGPチャンピオンに輝いた。スズキのライダーがタイトルを獲得するのは、2000年のケニー・ロバーツ・ジュニア以来、20年ぶりとなる。

 また、チームチャンピオンも獲得。チーム・スズキ・エクスターとして初のチャンピオン獲得となり、2冠を達成した。MotoGPのタイトルは残りコンストラクターズがあり、現在スズキとドゥカティが201ポイントで並んでいる。最終戦の結果ではスズキが3冠を達成することになる。

2020年MotoGP第14戦バレンシアGP ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)

 ミルは最高峰クラスにおけるスペイン出身のライダーとして、アレックス・クリビーレ、ホルヘ・ロレンソ、マルク・マルケスに続く4人目のチャンピオンになった。

 さらに2012年に始まったMoto3クラス王者として、初めてMotoGPクラスを制覇。レッドブル・ルーキーズ・カップ出身のライダーとしても、初めてのチャンピオンに輝いている。

2020年MotoGP第9戦カタルーニャGP チーム・スズキ・エクスターのジョアン・ミルとアレックス・リンスが表彰台

 また、ポールポジションを1度も獲得せずにタイトルを獲得したのは、1992年のウェイン・レイニー以来28年ぶり。スズキのライダーとして3戦連続表彰台を獲得したのは2000年のケニー・ロバーツ・ジュニア以来となり、年間1勝と年間の優勝数が最も少ないチャンピオンとなった。

 今シーズンはファビオ・クアルタラロ(3勝)、ブラッド・ビンダー、アンドレア・ドヴィツィオーゾ、ミゲール・オリベイラ、フランコ・モルビデリ(3勝)、マーベリック・ビニャーレス、ダニロ・ペトルッチ、アレックス・リンス、ジョアン・ミルが勝利しており、2016年とタイの歴代最多の9人目のウイナーが誕生している。

チーム・スズキ・エクスターのダビデ・ブリビオとジョアン・ミル

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