日本シリーズは“岡本を守れ” 専門家が解説、巨人が鷹に勝つためにやるべきこと

巨人・岡本和真【写真提供:読売巨人軍】

昨シーズンまで巨人で1軍外野守備走塁コーチを務めた鈴木尚広氏

21日から開幕する日本シリーズは昨季、4連勝で日本一となったソフトバンクに巨人が再び挑むという構図となった。巨人で20年プレーし、昨年まで1軍外野守備走塁コーチを務めていた鈴木尚広氏が「最大の焦点となる」と挙げたポイントは巨人の打者のキーマンとソフトバンクバッテリーが「潰すか潰されるか」の勝負にあると読み取る。

巨人は昨年のシリーズ4試合で、千賀、高橋礼、バンデンハーク、和田の4投手に封じ込まれ、打率.176、4戦で10得点と少ない数字で終わった。今年はそれを覆すためにも、攻略へ躍起になっていくだろう。鈴木氏は今季の巨人の戦い方を見ていて、昨年より、戦力は確実に上がっていると見ている。

「(第3次政権1年目となった)昨年よりも、今年の方が原監督の戦術を理解した若い選手が増えたと思います。優勝を決めてからのオーダーはバリエーションが豊富でした。原監督ら首脳陣は日本シリーズに向け、適材適所を見極めていたと思います」

足を絡めた戦術、1、2番を吉川尚、重信、松原らでいろいろと試した。短期決戦はレギュラーシーズンとは違う。百戦錬磨の原監督は多くの選択肢を用意して挑むはずだ。

「ファームで調整し、1軍に合流した亀井選手もそうですし、増田(大)選手を使っても面白いと思います。まずは1、2番が塁に出ないことには3、4、5番に坂本選手、岡本選手、丸選手がいても、生きてきません。1、2番が得点の呼水となります」

ただ、キーマンとなると、別にいる。やはり、今季リーグ2冠、4番の岡本だ。鈴木氏は「必ず、ホークスバッテリーは線を分断して、点にして、相手の攻撃力を弱めようとする野球をしてくるので、誰かを潰しにくる。勝負のポイントはそのキーマン、誰がターゲットになるかだと思います」

鈴木氏の「潰す」という意味は、バッテリーが9人の打者のうちに最も警戒する打者をシリーズを通じて、機能させないように徹底的にマークする作戦のことを示す。好投手といえど、9人の打者をフルパワーで抑え続けることは難しい。

「坂本選手、岡本選手、丸選手の3人を全力でマークすることも難しい。ただ、昨年は丸と坂本の両選手が13打数1安打、打率.077だったこともあり、私は岡本選手を徹底分析し、マークするんじゃないかなと思っています。内角攻めなど執拗に、岡本選手が根負けするくらい、やってくるのではないでしょうか」

ソフトバンクバッテリーに岡本へ全集中させないようにすることがカギ

ポイントゲッターがそのように押さえ込まれれば巨人の得点力は低下する。巨人サイドに対策はないのだろうか。鈴木氏は「巨人にも十分、勝機はあります」と断言する。

「だからこそ、1、2番が大事になります。彼らには岡本選手らを助ける役割ができるからです。塁に出て、仕掛けること。何かしてくるとソフトバンクベンチに思わせることです。岡本選手の時に、塁に出て、相手の気を引くことができれば、バッテリーは打者に全てを集中して投げることはできなくなります。どんな形でもいい。出塁することです」

野球はチームスポーツであり、日本シリーズという短期決戦はシーズンの常識が通用しない。しかも強敵のホークスならば、全員で束になって戦う必要がある。

「そのターゲットが誰になっているのか、それを早くチーム内で知ること、共有することが大事です。気付けば、チームの中で対策ができる。自分が狙われているとわかったら、その選手が自覚することも必要。自分はマークされているのか、助ける側になるのか、そういう立ち位置の理解が流れを掴み、そして変えて、結果を左右する形になると思います」

4番の岡本が、本来の打撃をすれば、このシリーズの流れは巨人に傾く。そのためには線を分断されないよう、足を絡めて、流れを作らなくてはならない。鈴木氏が「答えは試合の中にあると思います」と話すように、試合の状況を見ながら、原監督の考える野球を全員が共有し、選手個々のその試合、その流れに沿った役割を果たすことが重要となってくる。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2