客足戻ってきたのに… 「第3波」に長崎県内観光関係者ため息 不安払拭へ取り組み

料理を取る時は手袋を着用し、トングは1回使うごとに交換している=長崎市、ANAクラウンプラザホテル長崎グラバーヒル

 新型コロナウイルスの流行「第3波」の様相が強くなり、政府の支援策で個人客が戻りつつあった長崎県の観光関係者は影響拡大を懸念している。「ようやく客足が戻ってきたのに」「旅行を控える心理が広がる」。各施設などは新常態の生活様式に対応した取り組みを進めている。

 「Go To トラベルのおかげで個人の予約が増えつつあったのに」。軍艦島クルーズを運航するやまさ海運(長崎市古町)の伊達昌宏社長は先行きを懸念する。
 緊急事態宣言中の休業を経て6月に運航を再開した。密を防ぐため船の乗客を定員の220人から半減。前年の実績には及ばないまでも、「Go To」に東京が追加された10月以降、予約が増えた。年始までの運航日はほぼ満席に達していたが、全国で感染が拡大し、予約キャンセルが入り始めている。
 同市中心部にあるホテルは、売り上げが前年の6割程度まで回復。人の往来が増える年末年始を控えた時期での「第3波」の襲来に、担当者は「今のままだと旅行を控える心理が広がるだろう」と気をもむ。手指消毒やマスクの着用、3密の回避などをして宿泊者の不安払拭(ふっしょく)に努めるという。
 一方、貸し切りバスを利用するツアー客や修学旅行などの団体客の動きは鈍い。県バス協会の峯比呂志専務理事は「毎年、行楽シーズンはバスが足りないほどなのだが」とため息をつく。
 九州運輸局のまとめによると、9月の九州内の貸し切りバスの輸送収入は前年の26%と低迷。現在は若干の持ち直しが予測されるが、「前年には遠く及ばない」(峯専務理事)。貸し切りバスの需要が高いクルーズ船の県内寄港の予定は今のところなく、厳しい状況が続く。
 消費者ニーズの変化に合わせ、現状を打破しようと新たな動きも。長崎バス観光(同市滑石4丁目)は、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使ったオンラインの修学旅行とバスツアーを計画中。画面に県内観光地の街並みを映し出し、参加者が実際に現地を訪れなくても旅行気分を味わえるよう工夫を重ねている。
 ホテルは入浴や食事の対応も課題だ。長崎にっしょうかん(同市西坂町)は密を避けるため入浴人数を制限。一度に入浴できるのは最大30人、1人当たり30分までとして宿泊客に協力を求めている。
 ANAクラウンプラザホテル長崎グラバーヒル(同市南山手町)は、ビュッフェレストランの再開に合わせ、料理を取るトングを約200本買い足した。料理1品に1本だったトングは、利用客が1回料理を取るごとに交換し、使い回しを防ぐ。座席数も通常の6割に縮小。小林直樹広報マネージャーはウィズコロナを見据え「これをやれば安全、という決定打はないが、今後もふさわしい対策をしてお客さんをお迎えしたい」と話す。

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