ザ・プライベーツのインディーズ時代「CITY COCKTAIL」はひとつの通過点だった 1985年 11月22日 ザ・プライベーツのシングル「CITY COCKTAIL」がキャプテンレコードからリリースされた日

キャプテンレコードからリリースしたシングル「CITY COCKTAIL」

僕の場合、バンドは見た目というのが大前提なのだが、その中でも、スーツを着てカッコよくキメるバンドにも大きく影響されてきた。

リッケンバッカーを抱え誰よりも高くジャンプしたポール・ウェラー率いるジャム、そしてパブロックの帝王、ドクター・フィールグッド。フィールグッドの黒っぽさを日本でマッシュアップさせたザ・ルースターズ。これを継承し、90年代、その様式美を開花させたのがミッシェル・ガン・エレファント…

そんな中、僕にとっての極めつけの存在だったのがザ・プライベーツだ。1985年、雑誌『宝島』主催のインディレーベル、キャプテンレコードより、アナログ盤7インチ「CITY COCKTAIL」をリリースした当時の彼らにもそんなイメージがあった。

ザ・プライベーツは、2020年現在もバンドは継続中。結成37年というのは並大抵のことではないだろう。ブルースや60年代のブリティッシュビートに根差した小賢しいギミックなしの愛情溢れるロックンロールで今尚ファンを沸かせている。

クールなバンドスタイル、都会的なビートミュージック

彼らザ・プライベーツは、「CITY COCKTAIL」をリリースした2年後の1987年、東芝EMIとメジャー契約し、8月26日シングル「君が好きだから」をリリースする。ここで興味深いと思うのは、メンバーたちが十代の頃から慣れ親しんできたザ・ローリング・ストーンズをはじめとするブリティッシュビートに回帰しているということだ。

メジャーデビュー前のザ・プライベーツは、現在の彼らの持ち味とは少し違い、都会的なビートミュージックであった。それは、セカンドアルバムの頃のBOØWYや博多のモダンドールズにも通じる、まさに “洗練” という言葉が相応しい。

 おまえの言うことが
 間違いじゃないとは思うが
 俺はただ金には頭を下げたくは、ない

 期待と不安をシェイクして飲ませてくれる
 甘い蜜の後で苦い薬をつきつける

―― という「CITY COCKTAIL」の歌詞にもしびれた。タイトルもさることながら、ハードボイルドな都会の喧騒を思わせてくれる。そこに生まれる焦燥と不安、そこに生きるバンドマンとしての心情をリアルに突き付けられ、それがまたクールなバンドスタイルにピッタリとハマっていて、十代の僕はそんな彼らの音楽に恋焦がれた。

逆じゃね? メジャーデビューでレイドバックしたプライベーツ

しかし、メジャーデビュー後のザ・プライベーツは、このイメージから脱却する。ブルースハープの音色を全面に押し出したデビュー曲「君が好きだから」から始まり、1989年にリリースされた大名曲「気まぐれロメオ」では、ストーンズの「ブラウン・シュガー」を思わせるギターリフに一瞬で虜になった。そうして彼らは、自らのバックボーンに忠実な軌跡を作っていった。

普通は逆じゃないかと思う。制約の多いメジャーデビューにあたり、時代に合わせた洗練さが求められるのが常であるが、ザ・プライベーツは、自分たちの初期衝動である本来の持ち味に戻りレイドバックする。そしてこれが、現在まで転がり続けている秘訣なのではないか?

つまり「CITY COCKTAIL」は彼らにとって完成されたひとつの通過点だった――

そして、彼らは現在も媚びることなく、心底好きな音楽と向き合っている。今考えてみると、これをアマチュア時代の集大成と捉えることにより、当時のメンバーは20年後、30年後、いや、もっと先の自分たちの姿を見据えていたのかもしれない。

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※2018年6月22日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 本田隆

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