社説[児童虐待最多]DV対策と連携強化を

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 全国の児童相談所(児相)が2019年度に対応した児童虐待の件数が19万3780件(速報値)に上った。前年度に比べて21.2%増加し、厚生労働省が統計を取り始めた1990年度から29年連続で最多を更新した。

 警察の通告や近隣知人、家族・親戚らの連絡で児相につながった。対応件数の増加は、児童虐待に対する社会の関心の高まりが反映されている。

 それでも顕在化するのは一部にすぎない。事態はさらに深刻だととらえるべきだ。

 身体、ネグレクト(育児放棄)、性的、心理的の虐待4類型のうち、最も多かったのは心理的虐待で5割を超えた。子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」や無視、暴言などが含まれる。

 虐待で心に傷を負い、その影響が成長後も残る事例は少なくないという。子どもたちが感じた恐怖を思うと胸が痛み怒りを覚える。

 被害に遭った子どもを保護する児相の役割は増す一方だ。厚労省は、児童福祉司を2022年度までの5年間で2千人増やし5260人とする計画を進めている。

 専門的な立場で保護を担う児童福祉司の増員は歓迎すべきことだ。だが、現場では急激な増員で育成が追い付いていない面もあるという。

 千葉県野田市の小4虐待死事件では、加害者である父親が児相職員に威圧的な態度を取るなどして救いの手を排除したことが指摘されている。

 児相の体制強化には、マンパワーの質の充実が欠かせない。国は研修などにさらに力を入れてほしい。

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 家庭という「密室」で起きる児童虐待。DVも根は同じであり、その関連性が指摘されている。

 厚労省の専門委員会が07年1月~18年3月に発生・発覚した児童虐待死を分析した結果、検証可能な事例270人のうち2割弱で実母がDVを受けていたことが分かった。

 母親が夫のDVに遭い精神的に支配される中で、子どもへの虐待がエスカレートする。そんな状況が浮かぶ。

 一方、厚労省が全国の児相と配偶者暴力相談支援センターに18年度の連携状況を尋ねた調査では、児相の4割超、センターの3割超が連携した事案はないと報告していた。双方の連携を強化し包括的に母子を支援する必要がある。

 コロナ禍の今年は家族で自宅にいる時間が長く、生活不安のストレスのはけ口が子どもや母親へ向かう恐れがある。学校は子どもの小さな変化を見逃さぬよう気を配ってもらいたい。

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 県内でも児相が対応した虐待件数は増えている。19年度は1607件で前年度に比べ46%増え、2年連続で最多を更新した。全国と同様に面前DVを含む心理的虐待が増加し全体の7割近くを占めた。

 ことし4月、県の子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例が施行された。罰則規定はないものの体罰禁止も明記されている。

 子どもの権利を全力で守る。条例の理念の実現のため、児相と県警や市町村とのさらなる連携が欠かせない。