航空機のサプライチェーン 長崎県、認証取得を後押し

 長崎県や地元製造業界は、次代の基幹産業候補として、航空機のサプライチェーン(部品の調達・供給網)構築を目指している。三菱の関連工場進出はその好機となる。
 航空エンジンのサプライチェーンは階層構造で見ると分かりやすい(図参照)。米P&Wなど完成品メーカー大手3社に直接製品を供給しているのが、Tier(ティア)1と呼ばれる1次請けだ。国内には三菱、川崎重工業、IHIの大手重工3社が存在する。三菱グループの三菱重工航空エンジンは、燃焼器とタービンを中心に設計・開発・製造・整備を担っている。
 T1を支えるのがTier2と呼ばれる中核企業。県内では、東彼東彼杵町に拠点を持つウラノ(埼玉県)を筆頭に数社が該当する。ウラノはPW1100G-JM向け部品も国内T1に納入している。航空機は高度な信頼性や安全性が求められるため、T1から直接受注するには、航空宇宙防衛産業に特化した国際的な品質保証JISQ(ジスキュー)9100の認証が要件となる。
 そのT2に部品を納めるTier3、いわゆる協力会社は県内に10社程度ある。県や県航空機産業クラスター協議会(加盟55社)は、まずT3参入企業を増やそうとしている。例えば、材料を加工台に固定する「治具(じぐ)」は、造船の金属加工技術を生かしやすい。県はJISQ認証取得に向けたセミナー開催や三菱OBの派遣を通じて後押ししている。
 現在、三菱重工航空エンジンは燃焼器製造で20社と協業しており、県内企業とも交渉を始めた。原田亮・長崎工場長は「治具は手直しがいる。現場に近い企業にお願いできれば都合がいい」と話す。
 島内社長も、九州の半導体産業との親和性を挙げ、「(協業できる)ポテンシャルはある。近隣でパートナーを探したい」と意欲を示す。ただ一方で「長崎だけでなく全国至る所から『下請けに入りたい』との声が寄せられているが、かなりの準備期間や投資余力が必要となり、参入障壁は相当高い」とも述べた。

 


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