三菱航空機エンジン部品工場稼働 コロナで需要減退も成長率に期待

工場稼働を祝い、島内社長や中村法道知事、椎葉邦男長崎造船所長らがテープカットした 長崎市飽の浦町

 長崎市飽の浦町の三菱重工業長崎造船所内で今月、航空機エンジン部品工場が稼働を始めた。三菱創業の地を長年支えた造船、火力発電の両事業が縮小する中、これらに代わる成長産業として注目されている。新工場の概況と今後の計画を紹介する。
 ニッケル系合金でできた直径550ミリの円筒内で、圧縮空気と燃料が混ざり激しく燃焼、温度は2千度近くに達する。発生した高温高圧ガスがタービンを回す-。この「燃焼器」はエンジンの“心臓部”とされ、製造難易度が高いという。円筒の表面全体には空気で冷却するため、直径0.5ミリ程度の穴が7万個。三菱製の最新鋭高速レーザー加工機が1個当たり0.3秒で、決められた角度と配置で正確に削りだす。
 三菱の子会社、三菱重工航空エンジン(愛知県小牧市、島内克幸社長)の長崎工場として、鉄骨一部2階建て5970平方メートルを約80億円を投じて整備。三菱が愛知県以外に航空エンジン事業の拠点を置くのは初めて。米メーカーのプラット・アンド・ホイットニー(P&W)に燃焼器を納入し、欧州エアバスの主力小型機「A320neo」専用エンジン「PW1100G-JM」に搭載される。同機は羽田-長崎でも運航されている。
 三菱関係者によると、航空エンジンは一度受注すれば長期の連続生産につながる。特にA320neoは2016年の運用開始後ベストセラー機となり、50年ほど期待できるという。小牧本社工場が需要増に対応するには手狭となり、人材確保も厳しくなったため、長崎造船所の船舶用プロペラ工場があった場所を活用し、燃焼器とそのカバーの製造ラインをすべて長崎へ段階的に移管する。
 長崎工場は現在45人が勤務。その多くは、火力発電事業を担う三菱パワー(旧MHPS)長崎工場出身で、本社で研修を受けた。さらに21年4月までに、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)技術による自動化システムを導入し、1日24時間稼働となる。同10月には90人体制でフル生産に入り、燃焼器を月90台、ケースを月24台製造、年間100億円程度の売り上げを見込む。
 23年度以降の工場拡張も見据えている。米国企業に発注している耐熱のセラミックコーティング作業の移転を想定し、隣接地に3600平方メートル程度の用地を確保している。
 折しも新型コロナウイルス流行で需要は急減した。だが国内線向け短・中距離旅客機は回復が比較的早く、A320neoの運航時間はコロナ前の8割まで戻る見通し。島内社長は「成長率は三菱グループ内でかなり高い方」として収益性に自信を見せる。

三菱重工航空エンジン長崎工場には最新鋭の高速レーザー加工機(中央左)が導入された=長崎市飽の浦町

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